高校生が提案「バーチャル星空ツアー」 地方創生プランで最優秀賞

高校生が提案「バーチャル星空ツアー」 地方創生プランで最優秀賞
メタバースでの星空ツアーを考案した日野さん=撮影:水野拓昌
【協賛企画】
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 インターネット上の仮想空間「メタバース」を通じて地域の魅力を発信するアイデアを募集した「地方創生メタバースアワード」の授賞式がこのほど、東京都内で開かれ、神奈川県の中高一貫校に通う高校生の日野将英さんが最優秀賞を受賞した。日野さんのアイデアはメタバースで沖縄県国頭(くにがみ)村の星空を体験、方言によるガイドを加えて地元の人や文化と交流するツアー。同村への理解を深め、現実的な交流にもつなげていく事業提案だ。

 クリエーターを対象とした本格的なビジネスプランのコンテストで、現役高校生の最高賞選出は関係者を驚かせた。同アワードは、ブランディング・デザイン会社のGARDE(ギャルド)が2024年11月~25年4月、地域活性化・地方創生につながるアイデアを募集したもの。アイデアの実現を見据えた本格的なビジネスプランを求めるコンテストで、応募資格は高校生以上だった。対象自治体として国頭村と山形県飯豊(いいで)町が参加。ただ、他の自治体に関わるプランでも応募可能だった。

 日野さんの提案は「国頭人(くにがみんちゅ)とめぐる国頭村バーチャル星空(てぃんがーら)ツアー」。「てぃんがーら」は沖縄の方言で「天の川」だ。約300点の応募作品の中から最優秀賞に選ばれ、東京都港区の同社ギャラリーで開かれた授賞式では堂々とプランを説明した。

 「国頭村の圧倒的な魅力は豊かな自然。一方でオーバーツーリズムや少子高齢化に伴う伝統文化の後継者不足は深刻な課題」と指摘した上で、「一見、関係なさそうな国頭村とメタバース。しかし、両者には生かしきれていない可能性が眠っている。その潜在能力を発揮させて、新たな地方創生のモデルを築いていきたい」と提言。

 リアルタイム映像や録画映像を使ったメタバースで参加する星空ツアーで、沖縄県内でも独特な国頭方言(沖縄北部方言)によるガイド、自然の環境音や三線(さんしん)の演奏も取り入れるという事業概要を説明した。「交流や伝統文化を広めるきっかけになる」として、地域の魅力発信、移住促進へのつながりや他の自治体への応用も可能な点なども付け加えた。

 審査した同社役員やクリエーターは「選んでみたら高校生だったので驚いた」「課題設定から事業計画、マーケティングのフレームワークが一番しっかりしていた」「国頭村内の小中学生の社会学習でも使え、独特の方言の継承や地元の良さを発信する人材育成につながる」と高く評価した。

 日野さん自身、国頭村に行ったことはないが、修学旅行で近くの今帰仁(なきじん)村などを訪ね、自然や文化に感動。特に星空は「空気が本当に澄んでいて、小さな星もきれいに見えて本物だなと思った」という。元々、天体に興味があったことや国頭村が人工の光を抑えて星空の保持に力を入れていることも合わせ、星空ツアーを前面に出すプランを構成した。

 日野さんはビジネスプランのコンテストに興味を持ち、これまでも応募歴がある。同アワードもインターネットで探した。その時、応募期限まで1カ月程度だったが、アイデアなどを構想した後、期限間際の約10日間で一気に提出資料を作成した。

 プレゼンテーション資料としてパワーポイントで40枚以上のスライドを作成。国頭村、メタバース、それぞれ強みと課題を整理した上で事業概要、ターゲット、収益モデル、KPI(重要業績評価指標)を示している。

 スライドごとのポイントも明確。ビジネスプランのコンテストに挑戦してきた経験や、学校のデジタル化が進んだコロナ禍の時期に自分で考えて資料をまとめる学習を重ねたこと、探究学習で分かりやすく見やすい動画作成に取り組んだ経験が生きたという。その延長線上で、大学の研究開発や理系講義を高校生が受講できるグローバルサイエンスキャンパスに参加して学んだことも生かし、活字の字体にも気を配った。

 大学受験を控え、最後の機会かもしれないと挑んだ同アワードで初めて最優秀賞を獲得した。「絶対に他にないもの、オリジナルなものを作りたい」という思いが結実。「受賞は驚いたし、うれしかった」と笑顔を見せた。

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