「しくみ~な」で疑似体験 仕事と社会のつながり知る授業

「しくみ~な」で疑似体験 仕事と社会のつながり知る授業
渋谷区のブースでは、公園の環境整備に関する住民投票が行われていた=撮影:藤井孝良
【協賛企画】
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 さまざまな仕事の疑似体験を通じて社会の仕組みを知るPBL(Project Based Learning)型の授業がこのほど、東京都渋谷区立加計塚小学校(平野真由美校長、児童287人)で行われた。授業はシンクタンクの日本総合研究所創発戦略センターが開発したカリキュラム「子ども社会体験科 しくみ~な」の一連の学習の集大成として実施され、さまざまな企業などが協力し、子どもたちは社員や職員になりきって、ミッションを達成するべく協働した。

 授業は渋谷区が独自に設定している探究型学習「シブヤ未来科」の一環で、同小の5年生で実施された。

 「しくみ~な」はさまざまな企業や団体などが協力し、公教育の場で実社会にあるさまざまな問題を解決していくことを体験的に学ぶプログラムで、3年前に開発が始まった。現在は渋谷区や静岡県富士市の小中学校で導入されている。子どもたちは事前に全5回の座学の授業で、公共サービスや企業が利益を上げる仕組み、経済活動の意義などを学び、求人に応じて希望する仕事に応募。この日の社会体験活動に臨んだ。

 社会体験活動では、区役所やメディア、銀行、小売業、不動産、医療など、実際の企業が協力して疑似的な職場とまちをつくり、そこでミッションの達成を目指して働く。他の企業や団体へ商談に行ったり、支払われた給料を基に消費活動をしたりするなど、ビジネス・経済活動が展開され、納めた税金の使い道を考える活動なども組み込まれている。

 ニュースサイトを運営するNewsPicksのブースで広告の業務を担当した児童は「絵を描くのが好きで、本や新聞にイラストで分かりやすく人に伝えられる仕事ならばやりがいがありそうだと思って希望した。広告は多くの人と関わりながら、仲間と編集会議をして何をするか話し合いながらつくるのが面白い」と協働する楽しさを語った。

 一方、ホームセンターを全国展開するDCMのブースで店長を務めた児童は「店長という肩書がいいなと思って希望したが、みんなと最初に話し合って役割分担しながら、時間をやりくりしていくのが忙しくて大変だ。そんな中で接客や商品を陳列するのは難しい」と、責任と苦労を実感していた。

 同小で「しくみ~な」を実施するのは、今年で2年目となる。昨年も「しくみ~な」を授業で活用した藤橋華教諭は「子どもは会社がその会社だけで成り立っているものだと思っている。この体験をすると、意外と自分たちの会社の中だけで完結するものはないと分かる。他の企業や団体とつながらないともうけは出ないし、社会に役立つことにもつながりにくい。そうした気付きが自然と子どもたちの口から出てきたのは、すごくいい経験だ」と、「しくみ~な」の特徴を話す。

 

【キーワード】

キャリア教育 人が生涯を通じてさまざまな役割を果たす中で、自らの役割の価値などを見いだし、積み重ねていくキャリア発達を促す教育。社会的・職業的な自立に向けて必要となる能力や態度を育てることを重視しており、扱われるテーマは就職や進学だけではない。

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