次期指導要領で安全教育の時間確保を 有識者会議で意見

次期指導要領で安全教育の時間確保を 有識者会議で意見
今年度の学校安全に関する文科省の事業について協議した有識者会議=オンラインで取材
【協賛企画】
広 告

 文部科学省は7月7日、今年度の学校安全の推進に関する有識者会議の初会合を開き、今年度に重点的に取り組む施策の方向性について協議した。学校での安全教育の取り組みの充実について、現在検討が進んでいる次期学習指導要領を視野に、安全教育の時間の確保をはじめ、さまざまな学校で安全教育を効果的に実施していくために必要な提案をしていくべきだといった意見が出た。

 今年度の有識者会議では、主に▽学校事故予防に向けたデータの活用と施策の検証▽危機管理マニュアルなどの見直し・実効性を高める方策▽学校における安全教育の取り組みのさらなる充実――に関して、文科省の事業計画を検討。いずれも今年度中に成果物を取りまとめる。

 このうち、「学校における安全教育の取り組みのさらなる充実」では、セーフティプロモーションスクール認証校や学校安全総合支援事業モデル校などにアンケートを行い、先進事例を収集。安全教育の教育課程への反映や学校安全計画への位置付け、校内組織体制などの観点から分析し、安全教育の体系的な実施や指導内容の充実に向けた手法などを成果物に分かりやすくまとめ、学校現場で活用してもらうことを予定している。

 この事業について吉門直子委員(高知県土佐市教育研究所長)は次期学習指導要領に向けた議論が中教審で始まっていることを踏まえ「現行の学習指導要領の教育課程の中で、いろいろな教科の中に安全教育が書かれているが、ちゃんと学校教育の中で体系的に行われているかというと、そうではない学校もあるかもしれない。いろいろな教科の中で行われている安全教育をどう結び付けて体系化しているかという事例も集めていただきたい」と指摘した。

 吉門委員の意見に対し藤田大輔座長代理(大阪教育大学教授)も「次期学習指導要領への提案を含めた整理のような形で、教科横断的な活動を含めた具体的な提案を事業の成果物として出していただければいいと感じている」と賛同した。

 また、成果物について、坂井由利子委員(東京都国分寺市立第十小学校校長)からは「先進事例を収集しても、それはやる気のある学校の事例なので、なかなか広まっていかないのではないかというところもある。まずは(学校や教員の)安全教育に対する興味・関心をどう持たせていくかがとても大事ではないかと思う」という提案もあった。

 これらの議論を受けて渡邉正樹座長(東京学芸大学名誉教授)は「文科省から出ているものであれば、『これならばうちの学校でもできる』というものにしないといけない。一つは時間の確保のところだ。第3次学校安全の推進に関する計画でも安全教育の最初に安全教育に関わる時間の確保とある。これをクリアしないといけない。具体的にこうすれば安全教育を実践できるという方向性を、今回のもの(成果物)で出さないといけない」と強調した。

 

【キーワード】

セーフティプロモーションスクール 7つの指標に基づいて、学校安全を組織的、計画的に高めていくための実践をし、客観的な根拠に基づいた評価が共有されている学校を認証する制度。国の「第3次学校安全の推進に関する計画」では、この考え方を取り入れ、学校安全計画の見直しを含むPDCAサイクルの確立を目指している。

広 告
広 告