課題解決に「対話」の力を再確認 教育長・校長プラットフォーム総会

課題解決に「対話」の力を再確認 教育長・校長プラットフォーム総会
パネルディスカッションで対話の重要性などについて語った前山教諭(左から2人目)、高橋教育長(右から2人目)、槍澤教諭(右)=撮影:松井聡美
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 全国の教育長・校長をはじめとする教育関係者が集まり、学校教育の課題や未来の教育について語り合う「教育・学びの未来を創造する教育長・校長プラットフォーム」の総会が7月5日、東京都内の会場とオンラインのハイブリッドで開催された。会場とオンラインを合わせて165人が「語ろう、迷いも希望も。~あなたの気づきを大きなチカラに~」をテーマに、社会の変化を踏まえた教育の在り方など、それぞれが直面している課題の解決に向け、対話を繰り広げた。

対話をすることで、問題や課題の「根っこ」が見えてくる

 同プラットフォームは文部科学省若手有志職員が事務局の中心となって、2018年に設立された。現在は神奈川、戸田(埼玉県)、関西の3カ所に地方本部があり、教育長・校長ラボではテーマごとの活動なども行われている。

 パネルディスカッションには、和歌山県内の公立小中学校の校長を歴任し、今年度からは田辺市立中芳養中学校で勤務する前山賢一教諭と、神奈川県鎌倉市教育委員会の高橋洋平教育長、同市立小学校の槍澤(うつぎさわ)芽衣教諭が登壇。それぞれの迷いや希望について率直に語り合った。

 槍澤教諭は文科省に入省後、5年間働くうちに、学校現場で起きていることを自分の目で見たいと文科省を退職し、24年度から教員へと転身した。「教員としてまだ1年3カ月という短い期間ではあるが、学校現場のリアルを目の当たりにしている」と話し、「目の前の子どもたちのために何ができるか、毎秒、毎秒、何かを判断している。一人の人間として勝負している感覚がある。学びの本質を追究するのが教師の仕事の本丸ではあるが、それ以前の喫緊の課題が山積している」と教員としてのリアルな日々を語った。

 学校現場の課題を解決していく上で、3人からは共通して「対話」の大切さが語られた。高橋教育長は現在、指導主事との1on1(一対一で行う面談)に取り組んでいると話し、「1on1で対話することで、問題や課題の根っこの部分が見えてくる。表出していることではなく、そっちが根っこだったのかと分かることが多い。コアな部分を知らないと、施策なども前には進められない」と話した。

 それに対し、前山教諭も「起きている現象だけ見ていると、『なぜそうなってしまったのか?』と不思議に思うこともある。しかし、対話することで根っこのコアな部分まで立ち戻っていくと、分かり合えたり、共通項が見いだせたりして、次に一歩進める材料になる」と共感を示した。

 一方で、対話の重要さは認識しつつも、槍澤教諭からは「学校現場には対話にかける気力と時間の余白がない」との指摘も上がった。会場からも「対話が大事とは分かっているが、最初のきっかけはどうすればいいのか?」との質問が上がり、高橋教育長は「新しいことを始めるというよりも、例えば、すでに定期的に行われている会議などを、少しずつ対話の場にしていくという発想の方が始めやすいのではないか」とアドバイスを送った。

 「じっくり対話をしていくと、みんなのモヤモヤが出てくると思うし、その中に希望も見えてくる。やりがい搾取などと揶揄(やゆ)されることもあるが、教員という仕事は、本当は楽しい仕事だと思うので、それをみんなで共有していきたい」と前山教諭。

 槍澤教諭も「いろいろとネガティブなニュースが目に入るが、実際、学校現場の中に入ると、やりがいや誇りを持って楽しそうに働いている先生が多い。自分自身も1年教員をしてみて、言葉にできないやりがいをかみ締めている。一人前になるにはすごく時間がかかる仕事ではあるが、挑戦しがいのある、やりがいのある仕事だということが分かってよかった」と笑顔を見せた。

子どものモチベーションをベースとした学びが必要

テーマごとに分かれての対話セッションで熱く語り合う参加者=撮影:松井聡美
テーマごとに分かれての対話セッションで熱く語り合う参加者=撮影:松井聡美

 その後は、参加者が「社会の変化を踏まえた教育の在り方」「多様な個性や特性、背景を有する子供たち」「学校や教員の在り方」のテーマに分かれ、対話セッションを行った。

 「学校や教員の在り方」について対話したグループでは、教育委員会関係者が「学校に伴走支援をしたいけれども、さまざまな壁を感じる。学校にしたら、来てほしくない存在になっているのではないか」とモヤモヤを吐露。

 それに対し、別の教育委員会関係者は「同じ県内、同じ市内でも、学校によって抱えている課題は全く違う。教育委員会は各学校が自走できるような支援を意識していく必要があるのではないか」と投げ掛けた。

 また、「社会の変化を踏まえた教育の在り方」を考えていたグループでは、これからの教育について、「自分の好きなことにたくさん取り組むこと」「自己選択を重ねること」などが、子どもたちの核をつくっていくとの意見が上がっていた。

 小学校の校長は「もっと子どものモチベーションありきで学びをつくっていくことが必要ではないか。これだけ少子化が進んでおり、誰もが社会に貢献できるように育てていかなければ、もう日本は持たない」と危機感を示した。

 なお、同プラットフォームの神奈川本部では7月27日に、戸田本部では8月30日に、関西本部は26年8月8日に、それぞれ本部大会を開催する予定。

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