外国籍や日本国外にルーツを持つ「外国につながる子ども」の教育支援の在り方について考える「外国人児童生徒等の教育の充実に関する有識者会議」(座長:佐藤郡衛国際交流基金日本語国際センター所長、東京学芸大学名誉教授)の4回目会合が7月7日、オンラインで開かれた。外国につながる子どもの指導内容の進化・充実に関し、これまでの議論を整理した素案が示され、各委員が意見を交わした。素案では、ユニバーサルな視点での学級づくりなど、多様性の包摂に向けた具体的方策を検討することや、日本語と教科の統合学習による質の向上を図ることなどが盛り込まれた。
今回の素案では、「背景・総論」として、子どもたちが安心して過ごせる多文化共生(インクルーシブ)な学校づくりのビジョンを示した。グローバル化や少子化が進む中、共生社会の実現が不可欠だとして、学校全体が多様性を包摂し、一人一人の可能性を開花させる教育の実現が「喫緊の課題」であると指摘した。
さらには多様性を包摂する学校教育の実現に向け、子どもたちが持っている「長所・強み」に着目し可能性を発揮させていく視点を取り入れることや、「マジョリティー(日本社会で多数派にあたる人々)の変容も大切」と強調している。
また指導内容の進化・充実に関し、2025年4月から3回にわたり実施された有識者会議の議論を整理。その上で、①資質・能力を育成するための「日本語指導」の再定義②多様性を包摂する学校教育・在籍学級での学びの在り方③児童生徒のさまざまな「力」を引き出し、効果的な指導を行うための方策の検討④指導体制の充実に向けて――という4つの論点が示された。
このうち①では、漢字や文法の習得にとどまらず、日本語と教科の統合学習による質の向上が課題であると提起。特別の教育課程にあたり、日本語と母語の力を活用した知識・技能と、思考力・判断力・表現力等の一体的な育成が目的であることを明確化する方向で再定義すると明記し、それに伴う学校教育法の施行規則改正など法整備の必要性も指摘した。
②については、学校全体が多様性を包摂し強みにしていけるよう、ユニバーサルな視点での学級づくりなど具体的方策の検討が求められていると説明。加えて③に関し、全ての教員・支援員らが資質・能力を育成するための指導を体系的・専門的に実施するとしたほか、理念はもとより、指導内容や方法を含めた全体像を示すことが必要であると強調した。
これらの論点を踏まえ、④では日本語指導補助者・母語支援員の一層の配置促進や効果的連携を通して、指導体制の充実を図ることが不可欠と強調。国の調査による実態把握に加え、外国につながる子どもの教育に関する専門性向上や外部機関との連携については、さらなる議論が必要としている。
この素案に対しては、学習指導要領への記載を求める声が複数の委員から上がった。
小島祥美委員(東京外国語大学多言語多文化共生センター長准教授)は「20年改訂の際、特別支援教育について指導上の配慮事項の考え方が学習指導要領の総則に示されたが、外国人児童生徒についても学校種別に、各教科への明記が必要ではないか」と提案。それによって、外国につながる児童生徒への指導を巡る考え方や内容が学校現場に浸透し、「全教員が意識化することにつながっていく。個別最適な学びの具体化にもつながることになる」と強調した。
加えて浜田麻里委員(京都教育大学国文学科教授)は②や④に関わる問題として、在籍学級での支援に関し「現行の学習指導要領にもポイントは書かれているものの、学校現場になかなか伝わっていない」と指摘。子どもの認知能力や発達段階に応じて、在籍学級での支援方法を変えていく必要があると話し、「その際の支援のポイントについて、学習指導要領や解説に盛り込んでいただければありがたい」と訴えた。
外国につながる児童生徒を巡っては、公立学校の在籍者数が24年に13万8714人となり、この10年間で約2倍に増加。これに伴い日本語指導が必要な児童生徒数も増加の一途をたどり、23年には6万9123人と過去最高を更新している。