同僚からのパワハラで教員が自殺 宮城県教委が検証報告書

同僚からのパワハラで教員が自殺 宮城県教委が検証報告書
iStock.com/Kayoko Hayashi
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 県立高校に勤務する30代の若手教員が同僚の教員からのパワーハラスメントによって精神的に追い詰められ、自殺した問題について、宮城県教育委員会は7月10日、再発防止を目的とした検証報告書を公表した。パワハラを行った教員への指導の徹底や被害にあった教員と引き離すこと、校内のコンプライアンス推進委員会で聞き取り調査が実施されなかったことなどを挙げ、校長や教頭の「予見義務違反」「結果回避義務違反」が認められるとし、重大な過失があったと結論付けた。

 当時、教員になって4年目だった30代の女性教員が2020年10月に自宅で自殺し、公務災害を認定されたことについて、勤務校で起きていた同僚の男性教員からのパワハラの状況や管理職などの対応を、当時その県立高校に勤務していた教職員などからの聞き取りを踏まえ、県教委として再発防止の観点から検証を行った。

 報告書によると、同年6月、女性教員は同じ校務分掌で主任だった男性教員から、他の教員もいる前で詰問されるような指導を受けた。女性教員が男性教員に恐怖心を抱くようになったことから、両者の間で業務上の連絡をする際はメモでやり取りすることなどが決められたが、男性教員は業務以外の内容のメモを女性教員の机に貼ったり、分掌業務から今後一切排除するなどの趣旨の手紙を置いたりしていた。

 また、宮城県の県立高校では年に2回、教職員がコンプライアンス・チェックシートを記入するようにしており、懸念のあるCやDの評価をした教職員がいれば、校内のコンプライアンス推進委員会による聞き取りと、シートの1年間の保存を行うこととされていた。女性教員も男性教員も、パワハラが始まっていた20年6月に記入したコンプライアンス・チェックシートでCの評価を記入していたが、コンプライアンス推進委員会による聞き取りは行われず、職員会議で全教職員に報告されただけで、具体的な対応などは検討されなかった。

 報告書では、男性教員が精神的に不安定になっていた女性教員にメモや手紙を渡し続けていたことは「業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動」として、パワハラと認定。学校運営上の課題でも、管理職が両者の関係性改善に積極的に関与する姿勢が見られず、校務分掌の変更などを含めて両者を引き離すことをしなかったのが一番の問題とした。コンプライアンス推進委員会による聞き取り調査をしなかったことで、管理職として対応するタイミングを逃しているとも指摘した。

 その上で、教職員がパワハラの要件や影響を理解し、相談しやすくする職場環境をつくることや、校長、教頭、事務室長の三役で情報共有をし、対策を協議すること、被害を受けた教職員への援助と、加害を行った教職員への自覚と自制を促す継続的な指導を行うなどの再発防止策の徹底方針を示した。

 

【キーワード】

パワーハラスメント(パワハラ) 職場において個人の尊厳や人格を不当に傷つけられるなどの行為で①優越的な関係を背景にした言動②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの③労働者の就業環境が害される――の3つの要素を全て満たすものを指す。労働施策総合推進法によって、パワハラの防止措置が全事業主に義務付けられている。

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