阿部俊子文科相は7月15日の閣議後会見で、児童生徒への性暴力などで教員免許が失効した人のデータベース(DB)の活用状況について、全国の学校の実態調査に乗り出す考えを示した。文科相は「教員が性暴力を行うなどということは断じてあってはならず、未然防止に向けて全力を挙げて取り組む」と強調した。
「特定免許状失効者等データベース(DB)」は、2022年4月に施行された「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律」に基づいて文部科学省が整備し、23年4月から稼働している。都道府県・政令市教委などの任命権者が児童生徒への性暴力で教員免許が失効した人の情報を直接入力し、各教育委員会や私立の学校法人などが閲覧することができ、教員採用時に活用することが義務付けられている。
しかし、名古屋市教委が今月10日、同市立小学校教員の盗撮事件を受けて採用手続きを見直す中で、23年4月から今年6月までにDBを確認せず、正規教員と常勤講師など延べ5932人を採用していたことを公表したほか、文科省の調査で私立学校や幼稚園の運営法人の75%が活用していなかったことも明らかになった。こうした事態を踏まえて、同省で全国の実態調査に乗り出すことになった。
阿部文科相は会見で、「名古屋市教育委員会で、法律で義務付けられた手続きを実行できていなかったという事実は誠に遺憾であり、二度とこのようなことがないよう猛省し、失った信頼を取り戻していただきたい」と述べた。その上で、「今回の事案を重く受け止めて、全国の国公私立学校でのユーザー登録を改めて徹底するとともに、実際に適切に活用されているか調査するよう事務方に指示した」と述べ、速やかに実行したいとの考えを強調した。
さらに阿部文科相は「子どもを守り育てる立場にある教員が児童生徒性暴力を行うなどということは断じてあってはならず、未然防止に向けて引き続き、全力を挙げて取り組む」と述べ、性暴力根絶へ強い姿勢で臨む考えを示した。