全国の幼稚園・小中高校など、普通学校に在籍する医療的ケアが必要な子ども(医療的ケア児)のうち、12.7%の保護者が学校生活に付き添っている――。そうした実態が7月16日、文部科学省が公表した2024年度の「学校における医療的ケアに関する実態調査」の結果で分かった。調査結果を踏まえ同日、文科省は各自治体の教育委員会に対し、保護者の負担軽減に向けた対応を文書で依頼した。
調査は医療的ケア児に関する実態や推移を把握するため、10年度から毎年実施(20年度を除く)。24年度の調査では、国公私立の幼稚園・小学校・中学校・義務教育学校・高校・中等教育学校・特別支援学校を対象に、日常的に痰の吸引が必要な医療的ケア児の在籍数をはじめ、医療的ケアを行う看護職員の配置状況、保護者の付き添いの状況などについて尋ねた。
その結果、24年5月1日時点で普通学校に通っている医療的ケア児は2559人(前年に比べ360人増)、特別支援学校に通う医療的ケア児は8700人(同135人増)で、ともに増加傾向にあった。
このうち保護者が学校生活に付き添っている医療的ケア児は、普通学校で324人(12.7%)、特別支援学校で263人(3.8%)。登下校のみ保護者が付き添っている医療的ケア児は普通学校で1020人(39.9%)、特別支援学校で3869人(55.7%)だった。
付き添いが必要な理由として、普通学校では「医療的ケア看護職員や(特定の人を対象に医療行為ができる)認定特定行為業務従事者が配置されていない」との回答が145件(44.8%)で最多。一方、特別支援学校では、「看護職員や認定特定行為業務従事者はいるが、学校・教育委員会が希望しているため」が128件(48.7%)で最も多かった。
さらに各学校の医療的ケアの支援体制についても調査。痰の吸引などの医療的ケアを行う看護職員・介護福祉士・認定特定行為業務従事者は、普通学校で2745人(前年比424人増)、特別支援学校で7818人(同449人増)となり、いずれも増加傾向が見られた。
21年に施行された医療的ケア児支援法は、医療的ケアが必要な子どもへの支援を国や自治体の「責務」としている。そのため医療的ケア児の就学にあたり、保護者の付き添いがなくても必要なケアが受けられる体制整備を学校設置者に求めているものの、ニーズの増加に対応が追い付いていない。
文科省の担当者は調査結果を受け、「医療的ケア児と、ケアを担う看護職員らが順当に増加していることを把握できたが、保護者の付き添いを巡る課題も浮き彫りになった」と説明。保護者負担への対策として25年度予算に3000万円を計上し、教委による医療的ケア児の対応に関するガイドラインの策定に向け、「参考となるひな型を掲示するための調査研究を今年度から行う」(文科省担当者)としている。
加えて7月16日、文科省は各自治体の教委に、医療的ケア児の保護者負担の軽減に向けた対応を依頼する事務連絡を出した。保護者の学校への付き添いについては「真に必要と考えられる場合に限るよう努めるべき」と強調。医療的ケア児の早期の実態把握、支援体制の整備も行うよう求めている。