学校の保健管理の課題に関する文部科学省の調査検討会は7月17日、第2回会合を開き、学校医の確保や子どものメンタルヘルスの把握について、委員や関係者からヒアリングを行った。弓倉整委員(日本学校保健会専務理事)は、地域の診療所の減少や学校医の高齢化などの現状を踏まえ、学校医の確保が今後は一層困難になると指摘。子どものメンタルヘルスを学校の健康診断として行うシステムを研究している南和歌山医療センターの土生川(はぶかわ)千珠医師は、不登校や自殺のリスクを未然に防ぐ予防的支援として、学校健診における心のスクリーニングの必要性を提案した。
厚労省のシミュレーションによると、診療所の医師が80歳で引退して継承者がおらず、救急医療を含む一般的な入院治療に対応できる地域として設定されている二次医療圏の中で、診療所の新規開業がないと仮定した場合、関東地方の診療所の医師数は2022年から40年にかけて41.5%も減少することが見込まれている。弓倉委員はこうしたデータを踏まえ、教育委員会からの依頼を受けて医師会が推薦することが多い公立学校の学校医は地域の診療所の医師に依存していることから、医師の高齢化や診療所の偏在・減少などにより、今後、学校医の確保が困難になると警鐘を鳴らした。
その上で、日本医師会学校保健委員会が16年度に行った学校医へのアンケートで、学校医をしている内科・小児科医の35.3%が、学校医の業務で感謝されたこと、やりがいを感じたことがないと答えていることを紹介。「最近の(学校の健康診断の際の)脱衣に関する批判は、学校医のやりがいをさらに悪化させているのではないか」と懸念を述べた。
また、この日の会合では、ICTを活用した学校での子どものメンタルヘルスケアの研究を行う医師らが、その成果について報告した。
学校と自治体、保健・医療機関などが連携し、GIGAスクール構想で導入された端末から入力されたストレスのセルフチェックを基に、必要に応じてオンラインやSNSによる相談、AIチャットボットの利用などにつなげる取り組みをしている国立精神・神経医療研究センターの竹田和良医師は、メンタルヘルスには、他者に相談できるなどのコミュニケーションやつながりが重要だとした上で、「将来的にはプラットフォームをつくることを考えている。児童生徒が学校を中心に地域や社会と多様なつながりを持ち、メンタルヘルスケアを当たり前にできるような環境づくりの第一歩として活用してもらえたら」と期待を寄せた。
土生川医師は学校でGIGAスクール端末を使った定期的な心の健康診断のシステムについて発表。診断結果は点数化され、支援が必要な子どもは、学校や保護者に受診結果が送られ、学校医やかかりつけ医、さらには専門医などにつなげることができるようになっているという。
土生川医師は不登校などの子どもには共通の困り事として、生活リズムの乱れや頭痛・腹痛などの身体症状が表れる傾向にあるとし、「学校と医療をつなぐ早期のスクリーニングとしての心の学校健診をすることで、早期改善が期待できる」と強調。「就学してから社会に出るまでの期間、子どもから大人になる過程で不安が高くなる思春期の時期に心のスクリーニングがない。この年代に不登校と自殺が増加している」として、心のスクリーニングを学校健診として全国共通で実施すべきだとした。
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学校医 学校は、学校保健安全法に基づき、学校医を置くとされている。校長が医師の中から任命・委嘱する。学校医は、学校の保健管理に関して、指導助言をしたり、健康診断を行ったりする。学校の保健安全を担う医療専門家である学校医、学校歯科医、学校薬剤師を「学校三師」と総称する。