特別支援教育の調整額削減は見直しを 保護者らが改めて要請

特別支援教育の調整額削減は見直しを 保護者らが改めて要請
文科省と財務省に行った要望の結果を報告する保護者ら=撮影:藤井孝良
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 公立学校の教員の処遇改善の一環で特別支援教育に携わる教員に支払われている「給料の調整額」が削減されることに反対し、署名活動を行っている障害児の保護者らは7月18日、文部科学省で記者会見を開き、同省と財務省に対し、削減を見直すよう要請したことを報告した。文科省からはメールで要請・質問を送るよう求められたにもかかわらず、回答は「個別の質問・要望項目に関して答えるのは差し控える」というものだったという。

 今年6月に成立した改正給特法に関連して、文科省は負担と処遇のバランスに配慮した給与制度への見直しを行う方針で、特別支援学校に勤務する教員や特別支援学級の担任などに支払われている「給料の調整額」もその対象となっている。「給料の調整額」は給与月額に対し3%相当が加算されているが、これを27年1月から2年間かけて0.75%ずつ減らし、28年には1.5%相当に引き下げる。

 阿部俊子文科相は4月15日の閣議後会見で、「通常の学級にも特別支援教育の対象となる児童生徒が増加するなど、全ての教師が特別支援教育に関わることが必要となっている」と、特別支援教育を巡る状況の変化を挙げた上で、「教員の給与全体を検討する中において、教職調整額の10%への引き上げなどを踏まえつつ、他の教師と比較し一定の特殊性を有していることから、廃止ではなく半減とするものとした」と説明。「教職調整額の引き上げと合わせると毎年度、教師個人の給与水準は上がることとなる」と強調した。

 この報道を受けて行われた「給料の調整額」の削減に反対するオンライン署名への賛同は、7月18日朝の段階で2万4842筆に上った。改正法の成立後、署名活動を行ってきた「特別支援教育の『給料の調整額』削減に反対する有志の会」は、改めて文科省と財務省に要請を行った。

 このうち文科省からは、メールで要請内容と質問を送るように求められたため、「給料の調整額」を削減した分の使途や削減する理由などを尋ねるとともに、「給料の調整額」を削減しないよう要望したが、文科省からは「個別の質問・要望項目に関して答えるのは差し控える」とメールで回答があったという。

 一方、財務省には記者会見の前に直接担当者と会ってやりとりすることができたが、署名の賛同人でその場に同席した立正大学社会福祉学部社会福祉学科の児嶋芳郎教授は「財務省からは『給料の調整額』を下げたけれども、全体として障害のある子どもたちの教育を軽んじているわけではなく、いろいろな面から充実させる方向でやっているという回答をもらった。有志の会は『給料の調整額』のことだけで、こういった訴えをしているのではない。(実態として)障害のある子どもたちの教育は非常に軽んじられている。まずは障害のない子どもたちの教育が優先で、障害のある子どもたちの教育は後回しでもいいというような姿勢を見せられているのではないかと、保護者は憤りを感じている」と話し、障害のある子どもたちの尊厳に関わる問題だと訴えた。

 子どもが特別支援学級に在籍している丸山瑞果さんは「『給料の調整額』が削られるということが、特別支援教育に対する軽視につながる。増やしてほしいとも、今の額で十分だとも思わないが、あえて削ることこそが大変危険なのではないかというのが、保護者としての気持ちだ」と指摘した。

 

【キーワード】

特別支援教育 障害のある幼児児童生徒の自立や、社会参加に向けた主体的な取り組みを促す視点に立ち、個々の教育的ニーズや生活・学習上の困難を把握しながら、必要な支援を行う教育。特別支援学校や特別支援学級、通級による指導などだけでなく、通常学級の教育活動の中でもその重要性は高まっている。

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