【5類移行】文科省の曖昧な態度が学校を疲弊させる(藤川大祐)

【5類移行】文科省の曖昧な態度が学校を疲弊させる(藤川大祐)
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 新型コロナの感染症法上の位置付けが今年5月8日から、季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げることが発表された。本紙電子版1月20日付で報じられているように、永岡桂子文科相は同日、学校における対策を検討したい旨を述べている。文科省の衛生管理マニュアルの改訂が注目されているところだが、2月6日現在、まだマニュアルの改訂はなされていない。

現行の衛生管理マニュアルは、昨年4月1日版のまま

 学校における新型コロナ対応は、これまで文科省の衛生管理マニュアルに従って進められてきた。だが、昨年4月1日付のVer. 8から、衛生管理マニュアルは更新されていない。昨年4月というと、感染第6波の影響がまだ残っていた時期であり、首都圏などの地域で直前の3月21日まででまん延防止等重点措置が解除されたばかりであった。その後、昨年夏の第7波があり、オミクロン株対応のワクチン接種が始まり、さらに昨年冬からの第8波が現在まで続いている。感染者や濃厚接触者の待機日数や入国者への対応なども変わり、学校外の状況は大きく変化してきた。しかし、文科省の衛生管理マニュアルは昨年4月1日版のままなのである。

 4月1日版の衛生管理マニュアルでは、地域の感染レベルが「レベル1」から「レベル3」の3段階に分けられ、最も感染レベルが低い「レベル1」でも、身体的距離は「1㍍を目安」とし、休み時間においても「一定程度距離を保つこと、お互いの体が接触するような遊びは控えるよう指導」することが記されている。さらに、感染レベルにかかわらず、体育の授業でマスクを着用させない場合には児童生徒の間隔を十分確保すること、合唱ではマスク原則着用で前後左右できるだけ2㍍(最低1㍍)空けることなどが記されている。そして、マスクの着用については、「身体的距離が十分とれないときはマスクを着用するべき」とされている。

 このように、4月1日版の衛生管理マニュアルは、感染レベルが低くても、児童生徒間の距離を確保することを原則としている。学校外では、会食、旅行などの場面で人が密集して活動する機会が多いこととは対照的である。衛生管理マニュアルが10カ月以上も改訂されないのはなぜなのか、4月1日版に記されている事柄が現在でも妥当なのか、疑問である。また、1月20日から半月経過しても衛生管理マニュアルの扱いについて文科省から何の発表もないことも不可解だ。

受験の時期、学校での規制緩和は適さない

 このような文科省の姿勢は、学校現場を混乱させている。新型コロナ「5類」化によってマスク着用の必要がなくなり、卒業式などでもマスクを外せるのではないかという期待が一部で生じているようだが、衛生管理マニュアルが変わらないまま学校がマスクなしの卒業式の準備を進めるわけにはいかない。しかも1月から3月は受験の時期であり、児童生徒やその家族が受験生である家庭では、感染への不安が強い。他方で、報道の影響などで、マスクを外すなどの規制緩和を学校に求める保護者も出てきている。学校は、衛生管理マニュアルの規制と規制緩和を期待させる報道との間で板挟みとなりながら、保護者の要望への対応で疲弊することとなる。

 時期の問題もある。1月下旬から2月の時期は、学校での規制緩和を進めるには適さない。この時期には受験があり、受験生本人や家族に受験生がいる者は、感染によって受験に影響が生じることを恐れている。そもそも寒い時期で風邪やインフルエンザが流行しやすい時期でもあり、現にこの冬はインフルエンザの感染が拡大している。こうした時期にわざわざ規制緩和を進める必要はないと考える人が多いはずだ。

早急に見通しを示し、学校現場の対応を明確化することが必要

 文科省は感染防止マニュアルについての今後の見通しを早急に示すとともに、少なくとも今年度中について学校は従前の対策から大きな変更を行わなくてよいことを宣言すべきである。曖昧な態度を取り続けることは学校現場を疲弊させるだけなので、明確な見通しを示しつつ、学校現場からの意見も聞いて、必要な対策を遅滞なく進められるようであってほしい。

 コロナの「5類」化によって、感染防止マニュアルを廃止することもよいのかもしれない。ただ、「5類」化は5月8日なので、それまで昨年4月1日付の感染防止マニュアルを使うのかという問題は残る。文科省には早急に、特に以下の点についての明確化を求めたい。

〇感染レベルの区分の、現在の状況に合わせた見直し。

〇児童生徒間の座席の距離についての規制撤廃。

〇合唱における児童生徒間の距離の規制の緩和。

〇濃厚接触者の登校制限の撤廃。

〇マスクを着用するか否かについての児童生徒や保護者の判断の尊重と、着用者が非着用者から距離を置くなどの配慮の確認。

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