2022年11月に生成AIのChatGPTが世に出てから、日本の教育現場でも話題になっている。授業で使ったという教員は少ないかもしれないが、ログインをして使ってみたという教員はたくさんいるのではないだろうか。
私も昨年度、勤務先だった小学校で何度も研修をした。教員のほとんどがログインをして、そのメリットとデメリットは感じられたのではないかと思う。
しかし、その後、授業や校務で効果的に活用されていたとは言えなかった。そういう私も、使って遊ぶ程度。正直「うそを言う検索機能」と、「Siriのチャットバージョン」程度でしかなく、日々の忙しさに追われ、より良い使用方法について言及できていなかったのが実態だった。そんな教員もいるのではないだろうか。
この仕事(ベネッセ教育総合研究所の研究員)に就いてから、研究の中でChatGPTの活用についても扱うことが多くなった。私なりに考えているChatGPTについての考えをここにまとめたい。
まず1つ目は、「検索の機械ではない」ということだ。
私は最初、検索機能の優れているものだと思って使っていた。「庄子寛之について詳しく教えてください」と入れると、全くのデタラメが返ってくる。「違います。しっかり調べてください」と書くと、「申し訳ありません。私が間違っていました。庄子寛之さんは…」と、またデタラメが返ってくる。正しい情報を調べたいなら、ネットから検索したほうが良い。ChatGPTは知らないことを調べてくれる機械ではなく、人間が教えてあげてその続きを確率から考えてくれる機械なのである。
2つ目は、壁打ちに使って、業務負荷軽減へのチャレンジをすることだ。
「アフターコロナの小学校の運動会を考えたい。理想は以下のような運動会(ネット上で理想の運動会の種目や流れをコピペして貼り付ける)。うちの学校でできる運動会の流れと新しい種目を考えたい。うちの学校は児童生徒が◯◯人いて、昨年の種目は◯◯、◯◯(全ての種目を改行して羅列)」
こうすると、今まであなたが考えたことのなかったアイデアが生まれるはずだ。いや、1回のやり取りでは生まれない。何回も何回もチャットでやりとりを繰り返してみよう。「それはできないから、もうちょっと従来の流れに寄せてほしい」「その種目について具体的にどうすればいいか教えて」といった具合だ。1人の人がそこにいると思ってチャットしてよい。ChatGPTも学びながらより密な情報を与えようとしてくれる。
夏休みに試しておきたいことは、役に立つことを試しながらやってみることだ。
私がお勧めするのは「9月号の学級・学年・学校だよりの文章」である。実際にやってみたい。
学年だよりや学校だよりが苦手という教員は少なくないだろう。昨年のものをコピーして使っている人も少なくないはずだ。しかし、その年ならではのオリジナリティーのある内容を書くことはとても重要だ。
学年だより以外にも、講師依頼や行事の招待状の文面、さまざまな行事の企画書などにも使えそうだ。
ChatGPTは、確率から予測して文字を考えてくれる機械である。万能ではない。しかし、あなたの情報を記憶させれば、その機能はより正確になり、無限の可能性を秘めている。チャットのやり取りを何回も繰り返すことで、あなたが考え付かなかったアイデアや文章が生まれてくるはずだ。
小学校の授業に、今すぐ活用することはないかもしれない。使わなくても、教科書を使った授業に困ることはないかもしれない。
しかし、子供たちはすぐ大人になる。その時代には、生成AIを使った仕事は、当たり前になっているだろう。教師は、子供たちの未来のために教えているのである。教科書に書いてあることを教えていればいいのではない。
その当たり前に戻って、少し時間がある夏休みに、楽しみながらChatGPTに触ってほしい。