【好きは才能、才能を仕事に】 キャリア教育を民間から発信

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 子どもたちの学び方や就職観、夢の持ち様までもが、大人世代とは大きくかけ離れていく中、「どのようなキャリア教育をすればいいのか」と悩む教師は多いのではないだろうか。そうした中、広島市で民間のキャリア教育講座を主催する奥貴美子さんは「自己理解」をキーワードに、独自のメソッドで進路選択、職業選択をサポートしている。子どもたちの「好き」や「才能」はどのように見いだすことができるのか、奥さんに独自の視点から語ってもらった。(全3回)

自己理解は一人ではできない

――民間の立場でキャリア教育に携わってこられた奥さんですが、現状をどのように捉えていますか。

 子どもたちは一人一人、異なる興味・関心や個性、性格を持っています。キャリア教育に限らず、子どもへのアプローチは「目の前の人を理解する」ことが最優先だと私は考えています。そして、子どもたちにはさまざまな方向から「自分を知る」すべを身に付けてほしいと思っています。

 自己理解とは、自分の興味・関心や引かれるもの、自分の性格的な強みや使命、自分の情熱の在りかや感情の動き方などを、自ら理解している状態のことを指すと考えています。こうしたことは、実は大人でさえも分かっているようで分かっていないことが多いのです。

 自己理解とは、多くの視点から自分を見つめたときに共通する部分が抽出され、「自分ってこういうところがあるのかな」とふに落ちることで得られるものです。若い頃から才能を発揮して、プロとして活躍している人たちや仕事で成功している人たちを見ると、試合や大会、コンクールに出ることで大勢の人からフィードバックを受けています。だからこそ、「自分はこれでやっていけそうだ」「もともと好きだったことだけれど、これでいいんだ」と納得することができ、自らの才能を生かしたキャリア形成ができるのです。まさに「好きは才能、才能を仕事に」です。

子どもたちに「自分を知る」すべを身に付けてほしいと話す奥貴美子さん
子どもたちに「自分を知る」すべを身に付けてほしいと話す奥貴美子さん

 このような考えに基づき、私は多くの子どもたちに多角的な視点からの自己理解を体験してほしいと、オリジナルの「13の視点からの才能発見メソッド」を開発しました。実際には自分を知る方法は13だけにとどまらないのですが、多くの方法から自己理解に強く関連する視点を選び、体系化したものです。自己理解とは突然出来上がるものではなく、自分が形づくられるまでに影響を受けてきたものが要素として含まれます。もちろん「何に興味があるか」「どんなふうに育ったか」なども13の視点のうちの一部です。

「好き」の本質を見抜くのは難しい

――小学校で行われているキャリア教育も、「好きなこと」や「夢」から出発することが多いように思います。

 一口に「好きなこと」と言っても、例えば「スポーツが好き」と言う子どもは、友達とチームでわいわい関わるのが好きなのかもしれませんし、流行のものをするのが好きなのかもしれません。あるいは、大好きな親がやっているから好きという可能性もあります。

 「好き」から、本当の自分の軸を見いだしていくには、なぜそのスポーツが好きなのかを自分自身が多角的に見て、いろいろな視点からフィードバックを受ける必要があるのです。特に、子どもは無意識のうちに自分の興味や関心に寄っていっているので、「好き」の本質に気付きにくい側面があります。

 ちなみに私は新聞が小さい頃から大好きで、今でも毎日スクラップをするぐらいです。でも、好きなのは新聞それ自体ではなく「情報を必要な人に届けること」だと気付いたのは、大人になってからでした。

 また、周囲の大人が「絵が上手だね」「走るのが速いね」と長所を伝えても、子どもが心から納得していなければ自己理解には結び付きません。そのためにも、さまざまな視点からフィードバックを受けることが必要なのです。

「親子キャリアラボ」での活動の様子(奥さん提供)
「親子キャリアラボ」での活動の様子(奥さん提供)

――奥さんが開発したメソッドは、どのような形で用いているのでしょうか。

 私が主宰する「親子キャリアラボ」のクラスで用いています。講座のラインナップは、小学生から大人向けまで幅広く用意しています。子ども向けには伝記を対話形式で読み解き、主人公の性格や自分の価値観を考える「伝記クラブ」、メソッドを使いながらコミュニケーション能力や思考力、プレゼンテーション能力などを鍛える「キッズキャリアクラブ」、そこで発見した自己理解に基づき、自分の強みや大切にしたい価値観などを1冊のノートにまとめる「現在今自分帳作成セミナー」などがあります。その他にも、中学生や高校生が進路選択や職業選択などをする前に、自己理解を通じて自分に合った選択肢を見つけるクラスや合宿もプロデュースしています。

 また、大学生や大人、保護者向けのクラスとして、「今自分帳作成セミナー」の他に、わが子の「才能発見手帳」を作るクラスもあります。参加者の中には、子ども理解に役立てたいと考えている学校の先生や起業を目指す社会人もいます。いずれのクラスもグループ単位で受講し、1回3~4時間、計21時間程度を1期として、3カ月ほどかけて行われます。これまで開催したクラスは、累計で37期に上ります。

メソッド開発の原点

――自身でメソッドを開発し、民間のキャリア教育機関をつくろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

 私自身が歩んできたキャリアに原点があると思っています。私は子どもの頃からかなり個性的で、先ほどの新聞好きもそうですし、図書館に行っても本ではなく大人が読む雑誌を借りてきて編集者を探し当てたり、一人で知らない場所に出掛けたりするのが好きな子どもでした。高校生になる頃には、自分のセンスで世界観を表現できる仕事がしたいと漠然と思っていました。具体的に、ファッションやインテリアのバイヤー、スタイリストになりたいと思っていました。

現在の活動の原点は、自身のキャリアにあったと話す
現在の活動の原点は、自身のキャリアにあったと話す

 ところが、高校はそうした進路ではなく、成績に見合う学校に入学しました。いわゆる進学校です。両親には学歴コンプレックスがあり、大学進学以外は許してもらえない雰囲気があったのです。学校の先生も、進学するのが当たり前という雰囲気でした。「将来はバイヤーになりたい」と言っても、先生自身がその仕事を知らなかったのです。

 今なら、私はこの当時の「好き」が、「目の前の相手を理解し、その魅力や才能が引き立つように、自分で情報を集めて届ける」ことだと分かります。まさに今している仕事がそうだからです。でも、そうして自己理解に至るまでには、ずいぶんと時間がかかってしまいました。

【プロフィール】

奥貴美子(おく・きみこ) 山口県岩国市出身、広島市在住。英国でフリーのアンティークバイヤーとして活動、帰国後は海外派遣事業の引率や英会話教材の販売などの職歴を経て、2014年に起業。パーソナリティー分析と才能分析において独自のメソッド「13の視点からの才能発見」を開発し、現在まで多くの進路選択・職業選択・職業創造をサポートしている。(一社)職業セレクト研究所所長、親子キャリアラボ代表。日本で唯一の自己理解スペシャリスト。通称・クッキー先生。

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