金沢大学人間社会研究域学校教育系准教授
両親が高卒の子供は、両親が大卒の子供よりも大学に進学する割合が低い。親の学歴による教育機会の不均衡は、子供の可能性を閉ざすと同時に、社会の損失でもある。こうした課題に挑む取り組みが、スウェーデンを発端にヨーロッパで広がっている。大学生が小中学生のメンターとして継続的に関わるナイチンゲール・プロジェクトだ。
「人生最大の出来事は?」というカードの質問に、彼はさらっと「この学校に来たこと」と答えた。一緒にカードゲームをしていたクラスメートや担任教師の輪の中に穏やかな共感が広がる。この学校は、スウェーデン南部の都市マルメにあるセカンドチャンス・スクール。高校までの学び直しができる成人教育機関だ。3クラスのみの小さな学校を訪れた。
スウェーデンでは、行政手続きや電子決済サービスをはじめとして社会のさまざまな場面でデジタル化が進んでいる。それらをさらに進め、イノベーションを促進してデジタル化の可能性を追求しようという国家戦略を描いている。学校のデジタル化はその中で重要な役割を担う。しかし一方で、近年、デジタル版ではなく印刷媒体の教科書を見直す動きが広がっている。
今年秋から、スウェーデンの高校では「人工知能(AI)」という新しい教科が設置されることになった。日本でも学校にデジタルデバイスが浸透し、生成AIを授業内外でどのように利用するかについては多くの議論がある。だが、AIについて生徒に教えるとなると、何をどのように扱うべきか。それは、大人がAIについて、何を知っていて、何を考えるべきなのか、という問題提起でもある。
スウェーデンの基礎学校には、全員が受けるナショナル・テストがある。基礎学校3年生でスウェーデン語(国語)と算数の2教科、6年生では英語が加わって3教科、9年生(中学校3年生に相当)ではさらに理科と社会が加わって5教科のテストが実施されている。テストの内容は非常にユニークだ。
ChatGPTをはじめとする生成AIの利活用は、北欧の教育現場でも大きな議論になっている。授業や学習、または公務での活用が期待されている一方で、試験でのカンニングが懸念されている。スウェーデンのウプサラ大学では、今年2月にChatGPTを使ったカンニングが発覚し、その不正行為を行った学生は訓告処分を受けた。
常駐のスタッフがいて、若者と一緒に遊具や看板をつくっている公共の遊び場がスウェーデンにあると聞いて訪れた。ストックホルム中央駅から地下鉄に数分乗り、静かな住宅街を抜けると、広い緑地公園の一角に遊び場「ローリス・パークレーク」はあった。遠目には、カラフルな手作りの公園に見えるだけだが、近づいてゆっくりと時間を過ごすと、楽しさの中にたくさんの思いや歴史が感じられ、大切な理念が実践されていた。
スウェーデン・ウプサラ市の医療福祉サービスの一つに、「HIKIKOMORI(ヒキコモリ)」と名付けられた活動がある。長期間家に閉じこもって社会から孤立している18歳以上の若者に対して、社会復帰の支援活動を行っている。2010年に開始してからニーズは高まっているという、担当者のディアナ・グスタフソンさんにお話を伺った。
近年、スウェーデンでも、特定の分野に特異な才能のある子供たちへの教育に注目が集まっている。そうした才能は学校の成績に表れるとは限らず、むしろ学校に溶け込めなかったり、学習意欲を失っていたりする場合も少なくないため、気付くのは容易ではない。こうした子供たちへの教育として、特別クラスを設ける実験がスウェーデンで行われている。
スウェーデンでは、10月末から11月初旬の1週間にある休暇の呼び名が、「秋休み」から「読書休み」へと変わった。日本でも同時期に読書週間を迎えるが、スウェーデンでは学校が休みになり、図書館や書店をはじめ、テーマパークなどさまざまな場所で楽しい催しが行われる。
長い夏休みが終わり、スウェーデンでは新年度が始まった。今年度は、小・中学校段階にあたる基礎学校のナショナル・カリキュラムの改訂があり、評価方法が改訂された。今回の変更には、評価に対する教師と子供のストレスを減らし、成績がより公正なものになるようにという期待が込められている。
6月のスウェーデンは卒業シーズンだ。特に高校卒業は社会人になる区切りでもあり、盛大に祝われる。卒業生はスーツや白いワンピースを着て、白い学生帽をかぶり、スウェーデンカラー(青と黄)のリボンで結ばれたさまざまなプレゼントを受け取る。校舎から出てくる生徒を迎える人々は、卒業生の幼少時代の拡大写真をプラカードにして掲げ、成長を喜ぶ。高校卒業のお祝いは初夏の風物詩だ。
日本では全国学力・学習状況調査が4月19日に実施されるが、2024年度からCBT化が提案されている。スウェーデンでは、基礎学校の3、6、9年生(それぞれ、日本の小学3年生、6年生、中学3年生に相当)と高校生が、それぞれの学校で悉皆のナショナル・テストを受けており、現在、デジタル化に向けた試行錯誤が進められている。
ロシア軍がウクライナに侵攻した翌日、スウェーデンの学校教育庁ウェブサイトのトップページに、「戦争や危機に関する子供や若者との対話」についての記事が掲載された。紛争を「教室でどう取り上げるか」や「子供たちにどう話すか」といった記事ではなく、「子供との会話」の留意点であることが印象的だ。
スウェーデンでは、ほとんどの人がスマートフォンを持っているものの、デジタルツールの所有や利用に関しては、いまだに世代、性別、社会経済的背景による格差がある。こうした格差をなくし、全ての人が平等にデジタル化の恩恵を受けられる社会に向けて、学校のデジタル化が改めて強調されている。
日本にも北欧にも、夏が来た。休暇を心待ちにしている人がいる一方で、夏期講習で「勝負の夏」を過ごす受験生もいるだろう。スウェーデンには受験はないが、それでも夏期講習にいそしむ若者たちがいる。そしてその数が近年増えている。いったい何が起こっているのだろうか。
子供をスウェーデンの学校に通わせていた1年間、日本とは勝手が違って驚くことが多々あった。特に、大小さまざまな行事については、6歳の子供が聞いてくる情報に、半信半疑になることも少なくなかった。その一つが「明日は、バラバラの靴下を履いて学校にいく」というものだった。
日本の新しい高校学習指導要領では「総合的な学習の時間」が「総合的な探究の時間」となり、「理数探究」「古典探究」「地理探究」など、「探究」を重視する方針が打ち出されている。スウェーデンの高校でも探究的な学習は行われており、学習を生徒の進路や社会と結びつける重要な機会になっている。
全身タトゥーの男性が幼稚園児の指導を禁止されたというフランスのニュースが、ネット上をにぎわせている。スウェーデンでも近年、大小さまざまなタトゥーを目にすることが増えたが、教師のタトゥーには賛否両論がある。どんな議論が行われているのだろうか。
スウェーデンの大学入学者選抜では、基本的に高校の成績が用いられる。日本のセンター試験のように、受験生が一斉に受ける学力テストはない。一方、代替的な選抜方法として、任意で受けられる高等教育試験もある。近年、この試験で大規模な不正行為があり、世間を震撼(しんかん)させた。
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