問題行動が激減する MLAの理論と実践(12)SC・SSWとの連携

問題行動が激減する MLAの理論と実践(12)SC・SSWとの連携
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私はこれまでスクールカウンセラー(SC)として学校と協働してきた。今後チーム学校の動きが本格化し、心理の専門家であるSCや福祉の専門家であるスクールソーシャルワーカー(SSW)が学校に常駐するようになるだろう。その立場からMLAについて考えたい。

MLAの校内リーダーは、三次支援が必要になるような困難なケースに関する情報交換の窓口だけでなく、SCやSSWなどの専門家と教員の間を取り持つ通訳としての働きも求められる。その際に忘れてならないのは、教師の仕事は一次支援と二次支援で、三次支援はSCやSSWの仕事、ではないということだ。

どれだけ困難な三次支援の事例でも、SCやSSWに「お任せ」するような分業モデルでは、子供の包括的な支援につながらない。包括的な支援の実現には、教員・専門家・関係機関・保護者をつなぎ、それぞれの専門性や立場を効果的に活用する必要がある。言い換えれば、一次・二次支援の中に心理と福祉の視点を生かし、三次支援の中に教育の視点を生かす――そうした教育と支援を創造する必要があるということだ。MLAの校内リーダーは、そのコーディネーションを進める司令塔のような存在になる。

教員間や学校と専門職・関係機関とのコーディネーションを進める際、以下の三つのポイントを押さえて動くことで、効果的に専門職を活用できる。

①情報の共有: SCやSSWなどと可能な範囲での情報の共有と、共有した情報の守秘の確認をする。

②子供理解の共有: 子供の問題行動の意味をどう理解するか、さまざまな情報や検査結果から、子供が抱える課題の「見立て」を共有する。この際にSCやSSW、関係機関の専門家からの視点を学校生活に即した情報に翻訳し、子供が学校生活に適応できない理由の理解を深めていく。

③介入方針と役割分担: ①と②を基に目標を設定し、実際の行動レベルで誰が誰に、どのような介入をするかなどを調整していく。また、学年が違うなど具体的な役割がない教員へも、どのような見立てで子供をどのように支えるか方針を共有し、学校全体で子供を支える仕組みをつくっていく。

昨年、新たな国家資格である「公認心理師」が3万人近く誕生した。今後さまざまな職域の専門家が学校と協働し、子供を支えることになる。文部科学省は報告書の中で「その役割を担う教員を教育相談コーディネーターとして配置する」と述べている。MLAの校内リーダーはまさにその役割を担う存在になる。

(広島大学大学院教育学研究科客員准教授・臨床心理士 エリクソン ユキコ)

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