【「隠れ教育費」からの問題提起 (10)】隠れ教育費に対して学校ができること

福嶋尚子 千葉工業大学教育センター准教授

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 隠れ教育費が生じてきた最も根幹的な背景は、公費不足である。一方で、教職員にとっても保護者にとっても、時として隠れ教育費の負担の重さが見えていないこと、その隠れ教育費の中の必要性にグラデーションがあることなどが絡み合って、なおさらこの問題をこじらせてきた。

隠れ教育費の対策の類型(筆者作成)

 筆者自身、隠れ教育費は問題だと捉えているが、その解決策として一律に憲法や国際規約の理念に沿って無償化を進めることは難しいと考えている。それはよく言われる「財源がない」という理由だけではない。無償化で保護者の私費負担や教職員の自腹はなくなるかもしれないが、子どもたちの成長・発達上必要性の高くないものまでもが、無償の名の下に子どもに押し付けないかとの危惧があるからだ。さらに、無償の名の下に、教員の授業内容編成権や補助教材選定権、学校の教育自治が制約されることになるのではないかとの懸念もある。

 筆者がまとめた表にあるように、隠れ教育費の必要性や私費の負担形態によって、無償にふさわしいか、そうでないかには、濃淡がある。一食幾らという形で金額が一定であり、基本的に全ての子に提供されることが望ましい給食費などは、公会計化や無償化などの政策的対応を求めていくことが、子どもの権利保障だけではなく、保護者・教職員の負担軽減にもつながるだろう。修学旅行や学校が指定する教材類は、私費負担金額の決定権が教職員にある。そのため、指導計画や物品・業者の比較などにより、私費負担そのものを減らしていくことができる。学校事務職員が行っている私費負担軽減の取り組みが参考になる。

 学校を通さず保護者に購入を求める制服やセット系教材、消耗品などについては、準備すべきアイテム数を必要なものだけに絞り、これを明示する。例えば、ワイシャツを既製品でも可とする。裁縫セットははさみと針と糸を必須として、それ以外は家庭に任せるなどだ。部活動は全員加入を見直した上で、入部の際に必要な費用をあらかじめ開示すれば、費用面も踏まえながら入部先を選べるようになる。

 教材や行事関連費用など、教師・学校の決定権限の及ぶもので保護者に一律負担を求めるものは、専門的知見から自覚的に選定する。中でも必要性が高いものについては、校長・教職員の教育条件整備要求権を行使して、教育行政に公費負担を求めていく。購入するか否か、どれを購入するかが保護者裁量であるものについては、最低限欲しい機能・物品を示し、選んでもらえるようにする。

 このようにすることで、隠れ教育費は誰の目にも見えやすくなり、減らしやすくなる。

 (おわり)

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