少人数学級「来年度予算で検討」 教育再生実行会議が合意文書

政府の教育再生実行会議(議長・安倍晋三首相)は9月8日、少人数学級の実現について集中的に議論する初等中等教育ワーキング・グループ(WG)の初会合を開き、来年度からできるところから少人数学級の実現に取り組む考えで一致し、来年度予算編成の過程で「丁寧に検討すること」を求めた合意文書をまとめた。萩生田光一文科相は「(来年度予算編成に向け)議論の方向性を明確にしてもらった。(少人数学級は)できるところからやっていくべきだ。必要な対応について、関係省庁と議論を深めていきたい」と意欲を見せ、少人数学級の実現に向けて来年度から関連予算を盛り込む考えを明確にした。

少人数学級について説明する萩生田光一文科相

WGの初会合では、萩生田文科相が冒頭、先々週の安倍晋三首相の辞任表明を受け、「教育再生実行会議の取り扱いは、新首相の考えにもよるため、流動的な部分がある」としながらも、「新型コロナウイルス感染症を経験する中で、子供たちの学びを確実に保障するため、新たな学びに関する方向性をしっかり打ち出すことは、誰がリーダーとなっても取り組むべき重要課題であると考えている」とあいさつ。

「少人数によるきめ細かな指導体制の計画的な整備や、関連する施設整備などの環境整備の在り方について議論し、大きな方向性を確認できるようなら、ペーパーでまとめてほしい」と述べ、少人数学級の実現について方向性を明示する合意文書の作成を要請した。

議事内容をブリーフした佃和夫主査(三菱重工業特別顧問)によると、少人数学級による個別最適化された教育をやるべきだという方向性は、有識者の一致した意見だった。佃主査は「少人数学級化が喫緊の課題。日本の40人学級は多すぎて、不登校の児童生徒などにとっても人数が壁になっている。少なくとも早期に30人か、できれば20人を目指していきたいというのが、平均的な意見だった」と説明した。

WGの議論を説明する佃和夫主査(三菱重工業特別顧問)

このほか、オンライン教育について「個別最適化された教育と一体で進められるべきだが、初等教育では生活指導が大きく、オンラインだけでは無理。少人数学級はもとより、さまざまな事態に対応できる柔軟な体制にしておく必要がある」といった指摘があった。

「児童生徒の多様性が増す中、教員と教室の確保が必要だが、人手不足の中、教員の確保が非常に難しい。英語は海外のマンツーマン授業に一部変えるなど、柔軟な対応が必要ではないか」「分散型学習で学びを深め、少人数教育に対応するためには、教員の数だけでなく、教員の資質の確保が大切。教員に対する教育も考えるべきだ」といった意見も出された。

また、少人数学級の教育効果を検証する意味で、エビデンスを重視する必要があるとして、「データの取得が第一だ。少人数指導や少人数学級が教育格差の解消に寄与することをきちんと実証して、さらに強力に進めるためには、全国学力・学習状況調査などの活用も併せて必要なのではないか」との指摘も出た。

こうした議論を受け、WGでは「少人数によるきめ細かな指導体制・環境整備について」と題する合意文書を採択。その中で「ポストコロナ期も見据え、令和時代のスタンダードとしての『新しい時代の学びの環境の姿』を描き、特に、少人数によるきめ細かな指導体制の計画的な整備や、関連する施設設備などの環境整備を進める方向で、当ワーキング・グループで議論するとともに、今後、予算編成の過程において、関係者間で丁寧に検討することを期待する」と言及。少人数学級の実現を目指すと同時に、来年度予算編成の過程で具体化を図る必要性を指摘した。

この合意文書について、萩生田文科相は「議論の方向性を明確にしてもらった」と総括。少人数学級の実現に向けた施策を来年度予算編成に盛り込む理由について、「コロナの状況で、一定の距離を保った教室の在り方は、この機会に変えていかないといけない。第2波、第3波、あるいは新たな感染症が発生した時に、どうやって国は子供たちの教育環境を守っていくのかが問われているわけだから、緊急性がある」と述べ、コロナ対策のため緊急に必要な措置だと説明した。

少人数学級の学級規模については「1クラスに何人が適正規模なのか、深い議論まではまだ行っていない。あくまで大きな方向を決めさせてもらった」とした上で、「(少人数学級は)できるところからやっていくべきだと思う。来年度予算編成の過程で、必要な対応は関係省庁と議論を深め、方向性を見つけ出していきたい」と話した。

将来的な学級編の姿やエビデンスの検証などを含めた、中期的な計画の必要性について、萩生田文科相は「本来ならば、そういう全体像をしっかり示した上で対応するのがいいと思うが、第2波、第3波、あるいは形を変えた新たな感染症が拡大する可能性が否定できない今、できるところから取り組みをしていきたい。大きな制度設計は、中教審も含めて対応がなされると思う。文科省としては、全体像が決まるまで1歩も前に出ないんだ、というのではなく、必要なところからやっていきたい」と理解を求めた。

さらに、具体的な取り組みのイメージとして、2つの例を挙げた。一つは「小学校1年生については、すでに(学級編を)35人と決めているにもかかわらず、それすら実施できてない自治体も数多くある。こういったできるところから、しっかりやっていきたい」とした。

もう一つは「いろいろな学校を視察してきたが、いまの教室は少なくとも1列を外さないと、先生たちは教室の中を回れない。教室で縦の1列がなくなるような環境は、最低限でも確保してほしい」と説明した。

萩生田文科相は、続いて行われた閣議後会見で、WGが採択した文書について、安倍晋三首相に提出する考えを表明。安倍内閣の退陣が来週に迫る中で、教育再生実行会議で少人数学級の実現を予算編成の上で方向付ける合意文書をまとめた狙いについて、「課題はいくつも残っている。この文書を出したからと言って、直ちに来年度から少人数学級が日本中で始まるわけではない。しかし、日本の教育現場が少人数学級へシフトしていくという、大きな方向を示すことは、教育再生実行会議を設置した、安倍内閣の最後の意志として、しっかり足跡を残したいという思いでまとめた」と、気持ちを込めた。

教育再生実行会議は、2013年に安倍政権下で閣議決定によって設置された会議。事務局は内閣官房に置かれている。法律的な裏付けがなく、9月16日に成立する見通しの新政権がこの会議を引き継ぐかどうか決まっていない。

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