教科別のICT活用例公開 文科省、授業改善の方向性を明示

教科別のICT活用例公開 文科省、授業改善の方向性を明示
iStock.com/Xavier Arnau
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 GIGAスクール構想による小中学校の1人1台端末整備に向け、文科省は9月11日、ICTを効果的に活用した授業改善の事例を各教科別にまとめた、学校現場向けの参考資料をWEB上に公開した。留意点として「資質・能力の育成により効果的な場合に、ICTを活用する」「限られた学習時間を効率的に運用する観点からも、ICTを活用する」の2つを挙げ、「主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善につなげることが重要」と強調し、授業改善の方向性を明示した。

 今回の参考資料では、学校別の実践に役立つように、1人1台端末の活用例を教科別に紹介していることが最大の特徴。考え方の前提として、「一斉学習における学習課題等の、大型提示装置を活用した効果的・効率的な提示・説明などのICTの活用も、引き続き重要である」として、電子黒板など一斉学習にもICT活用の効果があると指摘。

 また、「災害や感染症の発生等により学校の臨時休業等が行われる場合においても、ICTを活用した家庭学習により、児童生徒の学びの保障が可能になる」として、ICTの活用に当たっては家庭学習との連携を念頭に置くよう促した。

 教科別に示された1人1台端末の活用例は次の通り。

【国語】■録画機能を活用して、スピーチをよりよいものとする
  • タブレット型端末等を使って、スピーチの様子を録画し、観点に沿って振り返ることで課題を見つけ、改善する
■書く過程を記録し、よりよい文章作成に役立てる
  • 文章作成ソフトで文章を書き、コメント機能等を用いて助言し合う
  • 文章作成ソフトの校閲機能を用いて推敲(すいこう)し、データを共有する
【社会、地理歴史、公民】■国内外のデータを加工して可視化したり、地図情報に統合したりして、深く分析する
  • 各自で収集したデータや地図を重ね合わせ、情報を読み取る
  • 分析した情報を、プレゼンテーションソフトで分かりやすく加工して発表する
【算数、数学】■関数や図形などの変化の様子を可視化して、繰り返し試行錯誤する
  • 画面上に表示した二次関数のグラフについて、式の値を変化させて動かしながら、二次関数の特徴を考察する
  • 正多角形の基本的な性質をもとに、プログラミングを通して正多角形の作図を行う
【理科】■観察、実験を行い、動画等を使ってより深く分析・考察する
  • 観察、実験を動画等で記録することで、現象を科学的に分析し、考察を深める
  • 観察、実験のレポートやプレゼンテーション資料などを、写真やグラフを挿入するなどして、一人一人が主体的に作成する
  • シミュレーションを活用して、観測しにくい現象を可視化し、理解を深める
【音楽、図画工作、美術、工芸、書道】■表現の可能性を広げたり、鑑賞を深めたりする
  • タブレットPCやソフトウエアを活用した、リズムづくりや動く工作、アニメーションの制作など、表現の可能性を一層広げる
  • 各自が曲の興味のあるところを繰り返し聴くなどして、よさや美しさを味わうことや、ネットワークなどを活用して、作品などについて感じたことや考えたことなどを共有する
【家庭、技術・家庭】■アイデアを可視化したり、実習等を振り返ったりすることで、問題解決を充実する
  • 動画等で実習・調査等を振り返り、評価・改善する
  • 3DCADを活用して設計を最適化する
【情報】■実習で、コンピューターや情報通信ネットワークなどのICTを積極的に活用し、アウトプットの質と量を高める
  • 情報を統計的に処理して判断する
  • 活動や情報技術を活用して問題解決をする
【生活科、総合的な学習(探究)の時間】■振り返りや表現に活用し、活動への意欲を高める(生活科)
  • 対象の拡大提示や記録した情報の伝え合いから興味関心や意欲を高める
  • 取り組みを映像で客観的に振り返り、自ら実感しにくい活動のよさに気付く
■情報の収集・整理・発信による探究の質的向上を図る(総合)
  • 実社会から多様な方法で集め、蓄えた情報から課題を設定する
  • インターネット、電子メール、WEB通信アプリ等を活用した取材
  • 蓄積したデータから必要な情報を取捨選択し、ソフト等を用いて分析
  • プレゼンテーション、サイトによる発信など、再構成した情報を幅広く伝える
【体育、保健体育】■記録をデータ管理し、運動への意欲をもち、新たな課題設定に役立てる
  • データ管理したこれまでの自己の記録を比較することで、伸びを実感したり新たな課題を設定したりする
  • ゲームの様子を撮影した動画を見返し、次のゲームに向けての作戦を考える
【外国語】■海外とつながる「本物のコミュニケーション」により、発信力を高める
  • 一人一人が海外の子供とつながり、英語で交流・議論を行う
  • ライティングの自動添削機能やスピーキングの音声認識機能を使い、アウトプットの質と量を大幅に高める
【特別の教科 道徳】■道徳性を養うための学習活動における効果的な活用
  • 子供が自分の考えを端末に入力し、共有して他者の考えを知りながら、それぞれの考えの根拠に基づき議論することで、多面的・多角的に考える
  • 子供が議論を通して道徳的価値の理解を深めた後、自己を見つめて考えを端末に入力し、教師がそれを把握、整理して、全体に共有する
【特別活動】■集団や自己の生活上の課題を解決する(学級活動・ホームルーム活動)
  • 生活場面を撮影するなど、必要な情報を収集し、学校生活や社会の問題を見いだす
  • 個人の意見を表明し意見を分類・整理する
  • 解決方法を集団として合意形成、個人として意思決定する
  • 実践を撮影して共有し、振り返りを次の課題解決につなぐ
【特別支援】■教科指導の効果を高めたり、情報活用能力の育成を図ったりするためにICTを活用■障害による学習上または生活上の困難さを改善・克服するためにICTを活用

参考資料は「各教科等の指導におけるICTの効果的な活用について」と題され、文科省のWEBページに公開されている。詳細版では、学習指導要領上の位置付けや学校種別を踏まえ、教科別の活用例を明示している。

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