羽生善治九段、人が上達する秘訣を語る 優秀教職員表彰式

羽生善治九段、人が上達する秘訣を語る 優秀教職員表彰式
「上達のプロセス」をテーマに記念講演する羽生九段
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 教育実践などで優れた成果を上げた教職員を顕彰する「文部科学大臣優秀教職員表彰式」が1月14日、東京都文京区の東京大学で開かれ、記念講演に将棋棋士の羽生善治九段が登壇した。羽生九段は出席した教職員らに、人が上達するための秘訣(ひけつ)を語った。

 今年度表彰されたのは国立、私立学校を含む全国の幼稚園~高校の825人の教職員と48の教職員組織。今年度から新たに、教職員経験10年未満を対象とする若手教職員等奨励賞が設けられた。

 表彰式で萩生田光一文科相は、働き方改革による職場環境の改善に意欲を示した上で、「教員志願者が減っている。昨今の報道で(教員が)ブラックな職業だとレッテル貼りされてしまっていることを大変残念に思う。ぜひ若手で表彰された方には、教員の育成の現場に入っていただき、学校現場の魅力を発信していただけないか」と提案。教職の魅力向上に対する優秀教職員への期待を述べた。

 また、受賞者を代表してのあいさつで、高知市立愛宕中学校の安達諭香教諭は「大きな社会変動を迎える中、今までの経験だけでは乗り越えることができないさまざまな課題に取り組まなければならない。しかし、どのように社会が変容しても、また、解決が困難な課題に直面しても、教育が子供たちの未来のためにあることを肝に銘じて取り組みを進めたい」と決意表明。

 「教員の仕事は多くの苦労を伴うが、子供たちの成長を身近に感じられること、子供たちと一緒に感動を分かち合い、共に夢を語れることなど、本当に人としての幸せを感じられる素晴らしい仕事だ」と述べた。

 記念講演では、永世七冠を達成した羽生九段が、自身の将棋に対する姿勢を振り返りながら、人が上達していくために必要な資質について語った。

 羽生九段は「小学生までは『習うより慣れろ』で、基本・基礎だけ教えた後は、実践を通じて学んでいくのがよい。中高生になると論理的に考えることができるので、ロジックを組んでやっていくことが大事だと思う。大切なことは、集中力をいかに持続させるかだ。集中力は誰もが生まれ持っているもので、もともとちょっとしか集中できない時間を、いかに長くできるかが上達につながる」と話し、集中して思考を重ねる習慣の重要性をアドバイスした。

 さらに、バスや電車での移動中、江戸時代に書かれた詰め将棋の問題集にひたすら取り組み、7年をかけて全ての問題を解いたエピソードを披露し、「解き終わった後には大きな感動があった。問題を解けた喜びよりも、芸術、感動的なものと出合えた気持ちの方が強かった。上達には、感動する気持ちや美意識が伴っている。その精度を上げることと上達することは、密接に関係している。たくさん練習したり、長く思考したりすることも大事だが、無駄なことを考えず、要点だけを考えられるようになることも同じくらい大切で、その指針になるのが美意識だと思っている」と語った。

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