休んだ教師の代わりにやってくる「リリーフティーチャー」 豪

休んだ教師の代わりにやってくる「リリーフティーチャー」 豪
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 オーストラリアの学校では、教師が休むと、代わりにリリーフティーチャーがやってくる。7月の中教審で話題になった英国のサプライティーチャーや、米国のサブスティテュートティーチャーと同じような役割を担う。彼らの存在は、学校に勤務している教師の働き方を支えるだけでなく、教職への多様な関わり方を保障している。

リリーフティーチャーは何者か

 リリーフティーチャーとは、学校に勤務している教師が病気や家族の世話などで休むことになった時に、彼らの代わりに学校で働く教師たちだ。基本的には1日単位で学校に入る。当日の朝に連絡を受けてから、すぐに勤務することも一般的で、まさに「リリーフ」(救援)である。リリーフとはいえ、教員資格という点では一般の教師と何ら遜色はない。

 リリーフティーチャーは、授業の実施はもちろんのこと、学校全体の教育活動に関わることもある。いつどの単元の授業をするのか、生徒にどのような課題を出すのかといったことは、ある程度休んだ教師が事前に整理している。リリーフティーチャーは当日、その内容を確認し、仕事をすることになる。そして約束された時間が過ぎれば、行った授業の内容や子どもの様子を報告して、学校を後にする。

 筆者が今年6月に南オーストラリア州で調査した際、日本にはリリーフティーチャーはいないと現場の先生に紹介するたびに、全員が驚きとともに声をそろえて「リリーフティーチャーがいなかったら、休んだ時、どうするの?」と質問してきた。それぐらい、学校現場では当たり前の存在として受け入れられている。

筆者が意見交換を行った南オーストラリア州フリンダース大学のキャンパス=筆者提供
筆者が意見交換を行った南オーストラリア州フリンダース大学のキャンパス=筆者提供

リリーフティーチャーの配置と課題

 リリーフティーチャーを探す時、現在多くの学校ではリリーフティーチャー派遣専用のアプリが利用されている。まず、リリーフティーチャーは、アプリに自分のプロフィール(教員資格や経歴など)、希望する地域や学校名、自身のスケジュールなどを登録する。学校はリリーフティーチャーが必要になった際に、フィルターをかけて候補者を探し、アプリから直接コンタクトを取る。そこでリリーフティーチャーがOKを出せば、勤務が決定する仕組みだ。

 現実的には、学校は何回もリリーフティーチャーで来てくれている人を選ぶことが多い。学校の様子が分かっていることや、子どもからも認識されていることなど、そうした人の方が信頼できるからだ。

 リリーフティーチャーの確保は、都市部ではある程度容易だが、遠隔地では難しい。オーストラリアでは、遠隔地を中心に深刻な教員不足の問題を抱えており、リリーフティーチャーも例外ではない。また、何度も来てくれる人をリリーフティーチャーに選ぶことが多いといっても、別の人を選択せざるを得ない時もある。そのため、さまざまなリリーフティーチャーが入れ代わり立ち代わり教室にやってくることもある。

 筆者が大学の教職員と意見交換をした際に、これらの状況によって、子どもたちの学習環境が落ち着かなくなり、子どもの不安につながる可能性があると話していた。子どもの視点からリリーフティーチャーを考えることも重要となる。

単なる代理要員ではない

 リリーフティーチャーには、退職教師と教員資格を取得したばかりの人が多いと言われている。退職教師にとっては、時間がある時に自分のタイミングで働き、これまでの経験を学校や子どもたちに還元できる。教員資格を取得したばかりの人では、いきなりフルタイムで働くより、リリーフティーチャーとして現場に入り、慣れたら徐々にフルタイムでの雇用を目指すというケースもある。

 どちらにせよ、リリーフティーチャーは、単なる代理要員ではなく、教師の多様な働き方の一つと理解する必要がある。

 ちなみに、南オーストラリア州におけるリリーフティーチャーの給与は、退職教師などの十分な経験がある人の場合、1日で約500オーストラリアドル(約4万8000円)となる。リリーフティーチャーという働き方への理解は、待遇の面にも表れている。

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