2022年度の夜間中学開校を目指している札幌市教委は7月3日、さまざまな事情で中学校に通えなかった人や外国籍の市民らを対象に行った、夜間中学のニーズ調査結果を公表した。開設されれば2~3割程度の人が入学に前向きな意向を示すなど、一定のニーズがあることが分かった。
1月21日から2月25日に行った同調査では、自主夜間中学や不登校経験者の支援団体などの協力を得て実施したものと、札幌市に住民票を置く3000人の外国籍市民を無作為抽出して実施したものの2種類のアンケートからニーズを把握した。
協力を得て実施したほうの調査では、札幌市内外に住む183人が回答。公立夜間中学について、「設置されれば入学したい」と答えたのは21人(11.5%)、「設置されれば入学を検討したい」は38人(20.8%)で、3人に1人は入学を前向きに考えていることが分かった。そのうち、中学校を卒業していないか、卒業証書はもらっているが、さまざまな理由で中学校に十分通えなかった人は24人を占めた。
入学を前向きに考えている人に複数回答でその理由を聞いたところ、「小中学校の勉強をやり直したい」が最も多く38人、次いで「社会常識を身に付けたい」が23人、「読み書きを覚えたい」が20人と続いた。また、夜間中学で実現してほしいことについても聞いたところ、「入学を4月だけでなく、7月や10月などほかの月にも入学できるようにしてほしい」が最も多く86人、次いで「保健室の先生などを配置し、相談しやすい体制にしてほしい」が64人に上るなど、柔軟な制度の導入や相談体制の充実を求める声が多く上がった。
外国籍の市民に対して実施した調査では、838人が回答し、公立夜間中学について「入学したい」は61人(7.3%)、「入学を検討したい」は146人(17.4%)で、4人に1人は入学に前向きだった。その理由を複数回答で聞いたところ、「日本の文化や社会を理解したい」が最も多く134人、次いで「日本語が話せるようになりたい」が122人、「日本語の読み書きをできるようになりたい」が114人と続くなど、日本文化の理解や日本語習得のニーズが高い結果となった。
この結果について市教委の担当者は「対象を絞ってもこれだけ入学に前向きな人がいたので、夜間中学は十分にニーズがあると考えている。全国的な傾向と比較すると、札幌市では外国籍の人はそこまで多くない分、高齢者や不登校経験者、外国籍の人が偏りなく通ってくることが予想され、多様なニーズに柔軟に対応できる学校が求められていることが分かった」と話した。このアンケート結果などを踏まえ、同市教委では今年度中をめどに公立夜間中学の基本計画の策定を急ぐ方針。
公立夜間中学は現在、10都府県に34校が設置されているが、北海道や東北地方にはない。2016年に成立した教育機会確保法を契機に、国は全ての都道府県で公立夜間中学を少なくとも1校以上開設することを目標としており、今年度には茨城県で初めて常総市立水海道中学校に開設されたほか、札幌市をはじめとする各地で開設への動きが出始めている。