政府の規制改革推進会議は5月18日、第10回会議をオンラインで開催し、デジタル技術の進展を踏まえた大学・高校の設置基準の見直し、外部人材の積極活用のための教員資格制度の見直しについて意見を取りまとめた。高校の教育課程編成について、学習指導要領の標準単位数に縛られずに単位数を増減できることや、後に履修する科目の内容を含めて学習指導要領に示していない内容を加えて指導することを可能にするよう求めた。また、外部人材を学校現場に登用する特別免許状について、学校長の推薦を待つのではなく、都道府県の教育委員会が主導して授与するよう求めた。
会議終了後、オンラインで記者会見した小林喜光議長(三菱ケミカルホールディングス取締役会長)は、意見書を出した問題意識について、「オンライン教育などデジタル化による教育環境の変化を踏まえ、教育現場の規制、制度の見直しが必要ではないか。また、人手不足の中で、教育の質を確保していくには、専門性の高い外部人材の活用を進めるべきではないか」と話した。
続いて、教育分野を担当する雇用・人づくりワーキング・グループの大槻奈那座長(名古屋商科大教授、マネックス証券専門役員)が、大学・高校の設置基準と、教員資格制度に関する意見書の内容を紹介。背景にある問題意識について「デジタル技術の進歩、オンライン授業が普及した現状と、一方で教育現場に定められているさまざまな規制の間に乖離(かいり)があり、見直す必要があるのではないか」と説明した。
意見書では、高校の設置基準について、教育課程編成の柔軟化による学習の質の向上が必要と指摘。具体的な内容として▽生徒の習熟度等に応じて、学習指導要領で設定されている標準単位数に縛られず、単位数を増減できること▽後に履修する科目の内容を含めて学習指導要領に示していない内容を加えて指導することが可能であること--を挙げ、この2点を学校現場に浸透させるよう求めた。
高校のICT活用では「プログラミングなど日々のアップデートが必要な教科について、教師の知識習得などソフト面も含めた支援」の必要を指摘。指導要録の電子化も促した。
また、教員資格制度に関わる規制や制度の見直しについて、大槻座長は「教員採用倍率が低下し、教師の質の確保が課題となる中、いかに規制改革の観点からアプローチするか」と議論の道筋を説明。これを受けて、意見書では「そもそも教師の『質』とは何かという議論なしには、規制改革の判断は難しい」として、まず教師の『質』ついて速やかに結論を得るよう求めた。
外部人材を学校現場に登用する特別免許状について、「現在年間200件程度にとどまっている特別免許状の利用促進に向けて、手続き面・要件面の見直しを求める」と要請。利用促進策として▽一定の能力・経験を有する社会人経験者が円滑に教員免許状を取得できるよう、特別免許状を活用した仕組みの検討▽都道府県の教育委員会が主導し、特別免許状を授与できるようにする▽学校外でのマネジメント経験を生かした管理職としての登用など、社会人を教育現場に柔軟に登用するための具体案を明確に示す--ことを求めた。
規制改革推進会議の雇用・人づくりワーキング・グループがまとめた、高校の設置基準等の見直しと、教員資格制度の見直しに関する意見書の概要は次の通り。※大槻奈那座長の説明を基に作成。