障害者の在宅就労 先輩が後輩に仕事のやりがい伝える

障害者の在宅就労 先輩が後輩に仕事のやりがい伝える
オンライン上で在宅勤務での仕事の仕方について説明する小林さん(上段中央)
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 重度の障害があり、在宅で仕事をしている人が、肢体不自由の特別支援学校高等部に通う生徒に、仕事のやりがいや進路のアドバイスをするオンライン授業が6月29日、岐阜県内の複数の特別支援学校をつないで行われた。同県では初めての試みだという。

 授業では、2年前に同県立可茂特別支援学校を卒業し、沖ワークウェルに入社した小林栞太(かんた)さんが講師を務めた。同社は社員87人中77人が障害者で、そのうち59人が在宅勤務をしながら、ホームページ作成やシステム開発、名刺作成などの業務を行っている。筋ジストロフィーにより車いすで生活している小林さんもその一人で、同県多治見市の自宅で介助を受けながら、ホームページ作成などの仕事をそつなくこなしている。

 小林さんは当初、イラストレーターの勉強をしたくて大学進学を考えていたものの、学校の施設がバリアフリーでなかったり、通学が大変だったりして断念。その後、地元の一般企業への就職も検討したが、毎日バスで車イスに乗りながら通勤するのは難しかったという。そんな中で、同校の教員が同社を小林さんに紹介し、以前から肢体不自由の特別支援学校の生徒に提供していた同社の「遠隔職場実習」に挑戦することになった。

 しかし、5日間の実習を終えて、小林さんが受けた評価は「作業は正確だが、コミュニケーションが取れない」という厳しいものだった。力不足を実感し、一度は就職をあきらめようとしたが、周囲に励まされて一念発起。教員と毎日雑談を意識的にするなどのトレーニングを積み、再び実習に参加。そこでの評価もあり、同社の社員として県内で初めて採用されることが決まった。

 その経験を踏まえ、小林さんは「自分自身も、できないことは手伝ってほしいと、はっきり意思を伝えられるようになった。円滑なコミュニケーションをするには、相手の意見を聞いて会話することが大事。学校の先生や家族をはじめ、いろいろな人と、好きなことや何でもいいので、話をすることから始めよう」と後輩に向けてアドバイスした。

 授業を受けていた生徒からは、在宅勤務の良いところや普段の仕事の仕方など、質問が活発に飛び交った。

 授業後、小林さんは「講師の話を受けたときは、うれしかった。体が十分に動かなくても、元気に働くことはできると伝えたかった。障害のある人が、もっと在宅で働けるようになってほしい」と思いを語った。

 授業を企画した岐阜県教委の兒玉哲也特別支援教育課長は「小林さんの姿を見て、同じように体の不自由な生徒も仕事へのイメージが持てたのではないか。アフターコロナでこうした在宅就労が普及することも見据え、県としても力を入れていきたい」と手応えを感じていた。

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