「文化部活動の地域移行」提言まとまる 休日先行で来年度から

「文化部活動の地域移行」提言まとまる 休日先行で来年度から
北山座長(右)から検討会議がまとめた提言を受け取る中原文化庁審議官
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 公立中学校の文化部活動の地域移行に関する検討会議の第7回会合が8月9日、開かれ、これまでの議論や各関係団体からヒアリングした結果をもとに修正を加えた最終の提言がまとまり、北山敦康座長(静岡大学名誉教授)から文化庁の中原裕彦審議官に手渡された。この提言に沿って、来年度からの3年間を改革集中期間とし、休日の文化部活動の移行が進められる見込み。先に運動部活動についても同じタイムスケジュールで地域移行を目指すことになっており、中学校の部活動は大きな変革の時代を迎えることになる。

 提言を受け取った中原審議官は「提言を踏まえて文化庁としては、スポーツ庁や文科省と連携しながら、今後、ガイドラインの改訂や各種通知の発出、関係団体への要請、部活動の現状に関する調査、概算要求、全国への普及啓発などを通じて、子供たちが文化芸術などに親しむことのできる環境の確保にしっかりと取り組んでまいりたい」と述べた。

 同検討会議は、少子化の進行による部活動の継続的な実施への懸念と、長時間となっている教員の働き方改革の2つの観点から、文化部活動の拠点を学校から地域へと移行することを目的に有識者や文化系団体、教委関係者らを構成委員として今年2月に設置。先立って土日の活動について移行の検討を進めてきた。

 提言案では、多くの生徒が文化的活動に親しめるよう、現在は文化部に所属していない生徒や障害のある生徒も含めて、文化芸術活動への参加希望者全てを対象として想定。実施主体(受け皿)としては、文化芸術に親しむ機会を提供する組織・団体は多様であり、当該地域の事情に応じた対応が求められるとした上で、文化芸術団体、地域学校協働本部や保護者会、同窓会、複数の学校が設立する団体など、学校と関係する組織・団体が想定されるとした。

 指導者の「質」の確保の観点からは、自治体の取り組みにおける、専門家による合同練習会の実施や外部指導者向けの研修動画を作成し外部指導者が受講している事例と、民間団体における、地域音楽コーディネーターや生涯学習音楽指導員といった資格による地域の音楽文化振興人材の育成、都道府県の吹奏楽連盟における指導者認定講座の実施などの事例を紹介。

 指導者の「量」の確保の観点からは、文化芸術団体などと連携して人材バンクを設け外部指導者を派遣したり、遠隔地の指導者によるICTを活用した合同練習や専門的な個別指導を併用したりするなど、地域の実情に応じて、取り組みを進めている事例も盛り込んだ。

 そして、指導者資格の取得や研修の実施の際、これまでの文化部活動の意義や役割を地域単位の活動においても継承・発展させ、新しい価値が創出されるよう、学校教育関係者などと必要な連携をしつつ、発達段階やニーズに応じた多様な活動ができるように留意する必要があるとした。

 指導を希望する教員についても、現行の地方公務員法や教育公務員特例法の規定に基づき、任命権者の許可を受けた上で兼職兼業できるとして、本業や心身に支障がない限り、円滑に許可が受けられる仕組み作りの必要性を指摘した。

 生徒たちが活動する文化施設についても、地域の社会教育施設や文化施設の利用が考えられるが、十分な数を確保するためには、これまで通り学校の音楽教室や美術教室などの施設を利用することが想定され、今後、利用ルールの改善や利用団体間での調整が必要になるとしている。

 大会やコンクールの在り方については、従来は学校単位での参加が基本とされていたが、地域移行後は学校以外の団体の参加も認めることを主催者に要請するとともに、教員の負担軽減の見地から大会の引率規定を改めるほか、教員の大会運営への従事についても見直しが必要としている。

 生徒が地域において文化芸術活動に参加する際に発生する会費については、学校の部費と比べて金額が大幅に上がることがないよう、適正な額の会費の在り方を整理する必要があると指摘。保護者にとって大きな負担とならないよう、社会教育施設や文化施設の低額利用を認めたり、送迎面で配慮したりするなど地方自治体や国からの支援を行う必要があるとしたほか、会費の負担自体に対し保護者の理解を得ていく必要性を訴えた。

 地域移行の達成時期については、文化部活動の環境整備には一定の時間を要すると考えられることから来年度から段階的に進め、3年後の2025年度末までをめどとする。国はこの目標時期を踏まえて、ガイドラインを今年度早期に改訂するとともに、全ての都道府県が休日の文化部活動の地域移行に向けた具体的な取り組みやスケジュールを定めた推進計画を策定し、それを基に各市町村においても推進計画を策定することを規定することが適当であるとしている。

 この日、北山座長は「部活動が学校から地域へ移行していくという、ある意味での大きな転換期。将来、その時期に中学生、高校生でよかったと子供たちに思ってもらえるように部活動改革が進んでいくことを願っている」と述べ、会議を締めくくった。

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