教育データの利活用に教育現場から疑問・不安の声 Q&A集を作成へ

教育データの利活用に教育現場から疑問・不安の声 Q&A集を作成へ
Q&A集について意見を交わす教育データの利活用に関する有識者会議(YouTubeで取材)
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 文科省の「教育データの利活用に関する有識者会議」は9月5日、第12回会合を開き、子供たちのデータを利用する際に学校や教育委員会が留意する事項をまとめた「Q&A集」の作成について議論した。事前に文科省が同省のメールマガジンで教委や教員、保護者らから募集した意見には「自治体のセキュリティーポリシーが厳しくコンテンツの活用に制限があり進まない」「児童生徒の卒業後はデータを返却した方がいいのか」「成績データをクラウドに上げてもよいのか」など、データを巡るさまざまな戸惑いや疑問が見られた。

 同会議では、来年度春ごろに改正個人情報保護法が施行されることを踏まえ、児童生徒のデータ活用を進めるにあたって「学校現場から、どのようなデータをどのように扱っていいのかという疑問や不安が出ている」として、今年度内の公表を目指して、個人情報の適切な保護と利用のために教員らが使いやすく、分かりやすいQ&A集の作成に乗り出している。

 そのための質問の参考として、文科省では8月にメールマガジン「GIGAStuDX(ギガスタディーエックス)」上で意見募集。教委、教員、保護者・その他から約50件の回答が寄せられ、この日の会議で代表的な意見が紹介された。

 そのうち、「入学・進級」に関しては、「教育データの取り扱いについて保護者から同意を得る場合、どの範囲・内容まで了承を得る必要があるのか」(教委)、「データを学校だけにとどまらず、塾やその他の教育機関で共有することはあるのか」(保護者・その他)などといった疑問や、「年度当初に個人情報の取り扱いに関する同意書をとっているが、結局何かあるたびに二重にとっている現状でなんとかしたい」(教員)といった意見などがあった。

 「日々の教育活動」については、「所属自治体の情報セキュリティーポリシー学校版が厳しく、さまざまなコンテンツの活用に制限がかかり、活用が進まない」(教委)といった戸惑いのほかに、「成績データなどの個人情報をクラウドに上げてよいのか」(教員)という疑問、「GIGAスクール端末で学力のみにとどまらず、資料の閲覧時間や位置データなど、プライバシーにかかわるところまで取集できてしまうのではないか」(保護者・その他)という不安の声もあった。

 また「卒業・年次更新」については、「卒業する児童生徒に教育データを返却するにはどのような方法があるのか」(教員)、「データは個人とひも付けされた状態でどのくらいの期間、保存、管理されるのか」と、やはりそれぞれの立場からの利用後のデータを巡る疑問の声があった。

 この日の会議ではQ&Aの構成イメージの説明があり、「クエスチョン」については、現場のニーズ・疑問に基づき、教育データの利活用に関して実務的に判断に迷うポイントを具体的に示すこととし、「アンサー」については教職員や学校関係者に向け平易な表現で簡潔に記載し、必要な対応がすぐにとれる内容とする案が示された。さらに解説の部分で詳細に法的な根拠を記述し、趣旨や背景、関連論点などを知ってもらうことで深く理解できる工夫をすることとした。同会議では今後も現場の疑問や不安の声に応えるQ&A集にするために、可能な限り多くの「クエスチョン」を集めていく方針。

 会議の終わりに堀田龍也座長(東北大学大学院情報科学研究科教授)は「先生方の多くが、知らない、今までやったことがないから不安であると思うので、このQ&Aが、その不安を少しでも払拭(ふっしょく)する形につながればありがたい」と述べた。

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