学制150年記念式典 両陛下、教育関係者にねぎらいの言葉

学制150年記念式典 両陛下、教育関係者にねぎらいの言葉
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 1872(明治5)年に日本初の全国規模の近代教育法令である「学制」が公布されてから、今年で150年を迎えることを記念して9月5日、国立劇場(東京都千代田区)で記念式典が行われた。天皇、皇后両陛下が出席され、岸田文雄首相や永岡桂子文科相も式辞を述べた。天皇陛下は「明治5年の学制発布は、全ての人々が基礎的な学校教育を受けられるようにするという構想を掲げたものでありました。この構想に沿って関係者がたゆみない努力を続けてきたことは、わが国の発展に極めて大きく寄与したところであり、ここに先人の努力に深く敬意を表します」と述べられた。

学制150年記念式典で拍手を送られる天皇、皇后両陛下(代表撮影)
学制150年記念式典で拍手を送られる天皇、皇后両陛下(代表撮影)

 式典では今年度の教育者表彰も行われ、全国高等学校長協会(全高長)の会長を務める東京都立桜修館中等教育学校の石崎規生(のりお)統括校長ら155人が表彰を受けた。天皇陛下は「私たちは今、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によるさまざまな困難に直面しています。これまでの日常が大きく変化している中で、本日表彰を受けられた方々をはじめ、教育に携わる皆さんのご苦労や努力もいかばかりかと思います」とねぎらいの言葉を掛けられた。

 そして「近年は、ICTを積極的に活用することにより、一人一人に最も適した学びの環境を整える取り組みも行われていると聞いています。このように、時代や社会の変化に対応しつつ、誰一人取り残されず、誰もが自分らしさを大切にしながら学ぶことができ、一人一人の可能性が最大限に引き出される教育の実現に向けた動きが着実に進むことを期待いたします」と話された。

東京都千代田区の国立劇場で行われた学制150年記念式典(首相官邸ウェブサイトより)
東京都千代田区の国立劇場で行われた学制150年記念式典(首相官邸ウェブサイトより)

 同じく式典に出席した岸田首相は「わが国の近代公教育制度は、学制発布によって創始された。『邑(むら)に不学の戸なく家に不学の人なからしめん』とする高邁(こうまい)な理想は、大正・昭和・平成という時を経て、令和の現在に至る教育制度の整備・拡充の源となった。いつの時代も教育は、国家、社会の礎であり発展の原動力だ。創意工夫や新しいアイデアを生み出すのは人であり、わが国の社会や個人の未来は教育にかかっている。新しい民主主義の柱の一つである人への投資は、社会全体が少子高齢化、グローバル化など、急激な変化をたどる中において、喫緊の課題だ」と語った。

 また、新型コロナウイルスの感染拡大や気候変動など地球規模の課題、国際情勢の緊迫などを挙げ、「立ちすくむのではなく、皆で協力しながら挑戦し、新しい日本をともに作り上げていかなければならない。そのためには、子供たち一人一人が自ら個性を磨き、創造性を伸ばし、またグローバル社会でも活躍できる心豊かな国民に成長することができるよう、これからも学校教育の充実を図っていく必要がある」と述べた。

 永岡文科相は「今、わが国は人生100年時代を迎えようとしており、またSociety5.0の実現に向けて、AIやビッグデータの活用などの技術革新が急速に進んでいる。これまでの功績を将来に引き継ぎながら、同時に、これからの社会の大転換を乗り越え、全ての人が豊かな人生を生き抜くために必要な力を、生涯を通じて身に付け、活躍できるようにすることが重要だ。その上で教育の力の果たす役割は大きいことは言うまでもない」と力を込めた。

 学制は日本発の近代学校制度に関する法令で、1872年8月2日(太陽暦9月4日)に太政官布告が発せられ、翌3日に文部省布達により太政官布告を添えて頒布された。学校を小学、中学、大学の3段階とし、小学校は8年制で下等小学(6~9歳)、上等小学(10~13歳)の各4年としている。

 文科省の情報ひろばでは9月30日まで、明治初期から現代までの教科書やカリキュラム関係の資料など、学制150年を記念した展示を行っている。また、文科省のウェブサイトでは、「学制150年史」を公開している。

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