2021年度に全国の児童相談所に寄せられた児童虐待の相談件数(速報値)が20万7659件に上り、過去最多だったことが厚労省の集計で9月12日までに分かった。前年度比2615件(1.3%)の増加で、2年連続20万件を超えた。また、20年度に虐待を受けて死亡した子供が77人(前年度比1人減)いたことも同日、明らかになった。
21年度中に全国225カ所の児童相談所が児童虐待相談として対応した件数をまとめた。内容別では、暴言を吐いたり無視したりするといった心理的虐待が最も多く60.1%に当たる12万4722件で、次いで身体的虐待が23.7%の4万9238件、ネグレクトが15.1%の3万1452件、性的虐待が1.1%の2247件だった。
相談が寄せられた経路としては、警察が10万3104件(49.7%)、近隣・知人が2万8075件(13.5%)、家族・親戚1万7344件(8.4%)、学校1万3972件(6.7%)の順で、児童本人からはわずか2529件(1.2%)だった。
都道府県別では東京2万6047件(前年度比311件増)、埼玉1万4370件(同709件増)、大阪1万4212件(同1843件減)、千葉9593件(同270件減)、神奈川7195件(同174件増)の順、政令市別では横浜7659件(同1194件減)、大阪6136件(同103件減)、名古屋3735件(同130件減)の順だった。
一方、虐待死については、77人のうち心中以外が49人で、65.3%の32人が0歳だった。このうち月齢0カ月児が半数を占めた。主な虐待の類型はネグレクトが22人(44.9%)、身体的虐待が21人(42.9%)。主たる加害者は実母29人(59.2%)、実父4人(8.2%)、実母と実父2人(4.1%)など。
加害の動機は「子供の世話・養育をする余裕がない」5人(10.2%)、「泣き止まないことにいらだったため」4人(8.2%)だった。養育者(実母)の心理的・精神的な問題については「養育能力の低さ」「育児不安」各15人(各30.6%)、「産後うつ」5人(10.2%)とされ、妊娠・出産・養育の過程で虐待が起きている背景が浮き彫りになった。