官民協働で「リアルな体験」を教育に 推進チームが初会合

官民協働で「リアルな体験」を教育に 推進チームが初会合
リアルな体験活動について、意見交換が行われた推進チームの初会合(YouTubeで取材)
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 企業などとの連携による子どもの体験活動を推進するため、企業や教育委員会、青少年団体など実務者により、8月に設置された「リアル体験推進チーム」が9月9日、初会合をオンラインで開いた。この日は、企業や各教委で行っている取り組みの紹介と意見交換が行われ、委員から企業と学校がマッチングする仕組みの必要性や人材育成などさまざまな意見が出された。年内にチームとしての推進方策をまとめ、公表する予定。

 子どもの体験活動を巡っては、少子化や核家族化、デジタル化が進んでいることに加え、コロナ禍や家庭の経済状況によって、体験機会に格差が生じていることを踏まえ、文科省は今年2月に発表した「教育進化のための改革ビジョン」で、今後の施策展開の方向性として、地域や企業などの力を巻き込んだ「リアルな体験」機会の充実を図ることを盛り込んだ。来年度までを重点期間とし、全ての学校でコミュニティ・スクールの導入を加速させ、地域や企業と学校が連携した形での学習支援や起業家との触れ合い、豊かな体験機会の提供を経済界との直接対話で強力に推進するとしている。

 また6月には、末松信介前文科相と経済界による「子供の体験活動の推進に係る意見交換会」が東京と大阪で開催され、子どもたちの体験活動を推進するため、文科省が経済界と連携して取り組みを進める「子供の体験活動推進宣言」を末松前文科相が発表した。8月時点で218の企業や団体が宣言に賛同している。

 これらの動きを受け、8月31日に設置された「リアル体験推進チーム」には、文科省や自治体、教育委員会に加えて、企業、青少年団体、NPOも参画。官民協働で子どもたちの体験活動の推進に向けた企画・立案を行う。

 この日の初会合では冒頭、文科省総合教育政策局の藤江陽子局長が「次代の社会を担う者として、新たな価値を創造する力、対立やジレンマを克服する力、責任ある行動を取る力などを身に付けていくためにも、子どもたちのリアルな体験活動というのは大変重要」とあいさつ。続けて、同局地域学習推進課から主な検討事項として、▽企業等と教育関係者とのマッチングの強化▽企業等の参加インセンティブの拡充▽教育関係者と参加を促進する仕組みの構築――などが挙げられた。

 その後、委員一人一人が体験活動について意見を述べた。佐藤初雄委員(NPO法人自然体験活動推進協議会代表理事)は「活動自体を指導できる指導員は数多くいるが、コーディネーターやプロデューサーというような役割を担う人材がまだまだ不十分」と述べ、学校と団体、企業のパイプ役や活動の普及を担う人材の育成が必要とした。併せて費用について、誰がどのように負担するのかも問題点に挙げた。

 松下整委員(高知市教育委員会教育長)は「職場へのアポを子どもがやることで、意欲を持たせることができるし、社会の窓口にもなる。一方で、その入り口を作るための企業とのやりとりが、教員にとっては最も労力がかかる」と指摘。教員の負担を減らした上で、地域に関係なく企業が発信する職場体験学習の情報を入手するためにも、企業と学校をマッチングさせる仕組みが重要とした。

 青木康太朗委員(國學院大學准教授/文科省生涯学習調査官)は「リアルな体験の意味は、その体験を通じてうれしいとか、感動するとか、心の中で感じるということがすごく大事。ただ体験をするだけじゃなく、子どもたちの成長につながるようなものは何なのかということも考えながら議論をしていければいい」とし、体験の場や機会の充実といった量的観点だけでなく、質にも目を向ける必要性を強調した。

 同会議の委員は次の通り(五十音順、敬称略)。

 ▽青木康太朗(國學院大學准教授/文科省生涯学習調査官)▽秋本光徳(茨城県教育庁学校教育部長)▽秋山洋(国立青少年教育振興機構教育事業部長)▽阿部裕行(㈱リコーESG戦略部兼プロフェッショナルサービス部ESGセンター事業推進室CSVグループリーダー)▽市田智之(サントリーホールディングス㈱サステナビリティ経営推進本部課長)▽柏崎洋平(野村ホールディングス㈱ファイナンシャル・ウェルビーイング室兼サステナビリティ推進室課長)▽佐藤初雄(NPO法人自然体験活動推進協議会代表理事)▽多田直之(パナソニックホールディングス㈱CSR・企業市民活動担当室主幹)▽長澤恵美子(日本経済団体連合会SDGs本部副本部長)▽夏苅一壽(神奈川県大井町教育委員会教育長)▽平野里美(阪急阪神ホールディングス㈱人事総務室サステナビリティ推進部課長・社会貢献担当)▽松下整(高知市教育委員会教育長)▽村松良臣(東京都武蔵野市教育委員会教育部指導課長)▽山下晃代(日本商工会議所企画調査部課長)▽山本潤(第一三共㈱サステナビリティ推進部主幹)▽湯浅香織(北九州市教育委員会学校教育課指導主事)▽吉村敏(ボーイスカウト日本連盟事務局次長)

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