送迎バスの安全装置設置 「財政措置含めて検討」

送迎バスの安全装置設置 「財政措置含めて検討」
送迎バスの運行状況について田澤園長(右端)と意見交換する小倉担当相(中央左)
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 静岡県牧之原市の認定こども園で、3歳女児が送迎バスに置き去りにされ死亡した事件を受け、小倉将信こども政策担当相は9月15日、送迎バスを実際に運行している幼稚園などの視察を行った。小倉担当相は園児の安全を確保するための安全装置について、「重要なのは、スピード感をもって安全装置を全国のバスにしっかりと備え付けてもらうこと。さまざまな安全装置があるが精査した上で、あらゆる園が子供の命を守るためにしっかりとした対応を取れるように、財政措置も含めて今後検討していきたい」と述べた。

 事件を巡って政府は、送迎バスを利用している全国約1万の園に対し、バス乗降時の園児の確認方法などの緊急点検を求めたほか、自治体に園に対する実地調査を行うよう指示した。政府は、関係府省会議で安全管理マニュアルの整備や園児の安全を確保する登園管理システムの普及、送迎バスに安全装置を導入するための支援など、再発防止に向けた緊急対策を10月中に取りまとめる方針としている。来週中にも有識者や先進的な取り組みをしている自治体の関係者からヒアリングを行う第2回会合を開く。

 この日、小倉担当相は3台の送迎バスを運行させている東京都江戸川区の東一の江幼稚園(田澤里喜園長)を訪問した。同園では園児の乗車時には、運転手と添乗する担任の計2人で対応している。今回の牧之原市の事件で問題となっている、園に到着後の園児の確認について田澤園長は「園児全員が降りた後に、添乗員がまずバスの中を消毒しながら必ず床も確認をする。その後に運転手がバスの中を確認することでダブルチェックになる。怖いのは子供が寝てしまって、そのまま床に落ちて気付かないことなので、運転手は清掃作業をしながら床の確認をする」と説明。

 その上で今回の事故を受けて、新たに「バスの後ろにチェック表を設けて、運転手と添乗員が最後に必ずそこまで行ってサインをするようにした」と付け加えた。同園では園児の出欠をアプリで管理。送迎バスの利用園児を添乗員の持つスマートフォンで把握し、園児一人一人を確認している。

田澤園長から送迎バスの説明を聞く小倉担当相(左)
田澤園長から送迎バスの説明を聞く小倉担当相(左)

 田澤園長は「ICTや機械はサポートしてくれるが、これが入ったからもう大丈夫だと思ったら、よくないのではないか。やはり安全対策は保育者、それから保護者の大人一人一人が自分ごととして、子供の安全を守るのだと思い続けることが大事だ」とICT任せにしないことの重要性を強調した。この後、小倉担当相は実際に同園の送迎バスに乗り込み、車内の状況を確認したほか、運転手や添乗員から話を聞いた。

 同日これより前に、小倉担当相は内閣府の駐車場内で、オルタナティブ・スクール「HILLOCK(ヒロック)初等部」(東京都世田谷区)の送迎バスも視察。同バスの安全装置は、エンジンを切るとバスの最後部に設置されたブザーが鳴るもので、運転手が最後部まで移動して音を止める必要があるため、その際に取り残された子供がいないかを確認できる。この装置は、さまざまな製品の研究開発を手掛けるオクト産業が今回の事故を受け、約1週間で初期設計から実証試験までこぎ着け、ヒロック初等部が実証試験に協力している。小倉担当相は「シンプルな構造だが、子供の命を守る実効性のある装置のように見た」と評価した。

 この日の視察を終えた小倉担当相は「デジタル技術は、子供の安全を守るための大きなツールになり得る一方で、完全にはヒューマンエラーを防ぎきれない、むしろデジタル化を通じて、人の安全への意識が薄れてしまうのではないかという懸念があるのも事実だ。そういう意味で、安全装置をはじめとするデジタル技術の導入と合わせて、ヒューマンエラーを人によって防ぐための、確固たるマニュアルの策定というのも大変重要だと感じている」と話した。

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