大学生になって授業が楽しくなったけれども、友人や教師との関係は高校生だったときの方がうまくいっていた--。大学2年生に学校生活の満足度を聞いたところ、3年前の高校2年生当時に比べて、友人や教師との関係がうまくいっていると回答した割合が減少した一方、授業が「ためになる」「楽しい」「役に立つ」「よく理解できる」と回答した割合が増加していることが9月28日、文科省が公表した「第20回21世紀出生児縦断調査」の結果で分かった。コロナ禍の影響が背景にあるとの見方も出ている。また、就職先を決める際に重視していることを聞いたところ、男子は給与や賞与の高さを重視すると回答した割合が高かったが、女子は職場の雰囲気の良さを重視すると回答した割合が高かった。
今回の調査では、学校生活の満足度について、20歳で大学2年生となった調査対象者が、3年前に17歳で高校2年生だった時点の第17回調査と比較した=グラフ参照。「学校の友人関係はうまくいっている」との設問には、「とてもそう思う」と「まあそう思う」を合わせた「そう思う」との回答は、高校2年生時点の92.0%から、大学2年生時点では85.9%になり、6.1ポイント減少した。「教師との関係はうまくいっている」との設問でも、「そう思う」との回答は87.8%から80.0%に7.8ポイント減った。
一方、授業の内容については、高校生のときよりも大学生になった現在の方が満足度は高いとの結果が出た。「楽しいと思える授業がたくさんある」との設問に「そう思う」と回答した調査対象者は、高校2年生時点の58.2%から、大学2年生時点では67.5%になり、9.3ポイント増えた。「学校の勉強は将来役に立つと思う」との設問でも、「そう思う」との回答は73.4%から11.3ポイント増え84.7%となった。
学校生活の満足度が変化した背景について、調査を取りまとめた文科省では「調査対象者は昨年の大学2年生なので、新型コロナウイルスの影響で大学のキャンパスにほとんど行けていないという事情もあるのではないか」(総合教育政策局調査企画課)と指摘。コロナ禍によって大学の授業の多くがオンライン化され、友人や教師と対面で触れ合う機会が減る一方、端末を見ながら授業に集中する学生が増えたのではないか、との見方を示している。
また、就職に関連して、今回の調査では「就職先を決めるにあたって重視していること」を初めて聞いた。この結果、Z世代と呼ばれる20歳の男子と女子に、就職を巡る意識の違いがあることが鮮明になった。
大学生の男子が最も重視しているのは「給与や賞与が高い」で58.9%を占めた。次が「自分のやりたい仕事ができる」で55.0%、「職場の雰囲気が良さそう」が46.4%、「正社員として働ける」が46.0%と続いた。
これに対し、大学生の女子が最も重視しているのは「職場の雰囲気が良さそう」で64.3%を占め、「自分のやりたい仕事ができる」が62.5%で続いた。3番目は「給与や賞与が高い」で56.7%、4番目は「生活の必要に応じて休暇を取りやすい」で49.0%だった。文科省では「女子は職場の雰囲気の良さを重視する傾向がはっきり出た。いまの20歳にも、就職を巡る男子と女子の意識の違いがあることが分かる」(同課)としている。
この調査は、2001年に生まれた子供のうち1月10~17日と7月10~17日に生まれた約3万人を継続的に調べるもので、同じ子供を対象に、学校教育から就業までどのように変化していくかを毎年追跡している。今回の調査は20歳を対象に昨年実施した。回答者数は2万4335人。内訳は、大学1万3691人(56.3%)、短期大学960人(3.9%)、高等専門学校345人(1.4%)、専修学校・各種学校3236人(13.3%)、その他・不詳の在学者304人(1.2%)、就職者3687人(15.2%)、その他817人(3.4%)、不詳1295人(5.3%)。在学者の合計は1万8536人(76.2%)だった。