ローマ字のつづり方、11中8単語でヘボン式上回る 国語世論調査

ローマ字のつづり方、11中8単語でヘボン式上回る 国語世論調査
iStock.com/kyoshino
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 文化庁は9月30日、2021年度「国語に関する世論調査」の結果を公表した。今回は文化審議会で早急に検討すべき課題として挙がったローマ字について初めて調査。地名など11の単語のつづり方を尋ねたところ、8つの単語で、学校教育で使われている訓令式ではなく、英語風のつづりであるヘボン式が上回った。同庁では来年度以降、ローマ字の使い方について、さらなる実態調査の実施を検討中で、集められた客観的なデータを施策に役立てるとしている。

 ローマ字に関しては、1954年に国語をアルファベットで書き表すことを目的にした内閣告示に従い、第1表に示された訓令式のローマ字つづりを中心に学習している。一方で、今後10年ほどの国語・日本語の検討事項を整理している文化庁の文化審議会国語分科会国語課題小委員会において、社会生活ではヘボン式が用いられることが多く、加えて、小学校の教育課程に外国語が導入され、情報機器におけるローマ字入力の機会が増えたことで、使い分けに混乱が生じているとの指摘がされていた。

 

 今回の調査では、「厚木(あつぎ)」や「抹茶(まっちゃ)」など11の単語をそれぞれ訓令式とヘボン式、また電子機器のローマ字入力で使われる表記を選択肢にし、どれを使うか尋ねたところ、「愛知」や「岐阜」など8つの単語でヘボン式が訓令式を上回った。一方、「会津」や「丹波」などは訓令式の表記が上回った。また、「田園」や「抹茶」は情報機器のローマ字入力で用いられる表記が最も多かった。=図表①

 この結果について、文化庁国語課の圓入由美課長は「ヘボン式と訓令式をあまり意識しないで使っているところもあるのではないか」と述べた上で、それぞれの表記について、「英語が普及したこともあり、特に若い方で、英語に慣れている人からすると、ヘボン式しかないと思っている人もいる。一方で、外国人が、日本語を勉強するために発音するという意味では、訓令式の方がしっかりしているという意見もある」とした。

 文化庁では審議会の指摘も踏まえ、来年度以降、教育現場だけでなく、交通や観光、海外も含めローマ字の使用状況について、広い範囲で実態調査を行う方針で、圓入課長は「1年2年かかるかもしれないが、生活に関わるような話なので、きちんと調査もした上で審議をし、考え方を提示したい」と述べた。

 

 また、GIGAスクール構想など教育のデジタル化が進む中、スマートフォンやパソコンといった情報機器の普及が、言葉や言葉の使い方に影響を与えると考える人は90.6%に上った。影響を受けると回答した3243人に、どのような影響か尋ねたところ、最も多かった「手で字を書くことが減る」(89.4%)とほぼ同じくらい、「漢字を手で正確に書く力が衰える」(89.0%)が挙がった=図表②

 文化庁国語課の武田康宏主任国語調査官は「どんどん情報機器が生活や学校教育に入ってきている。手書きする場面が今に比べて少なくなっていく可能性はある」とする一方、「情報機器が入ってきたことで、前は簡単に書けなかった漢字や文章が書きやすくなったところもある。それによって、より良い表現や優れた表現にたどり着くこともありうる。そういった良い面を見ていきたい」と述べた。

 同調査は社会状況の変化に伴う日本人の国語に関する意識や理解の現状について調査し、国語施策の立案に役立てるとともに、国語に関する興味・関心につなげようと、文化庁が1995年から毎年実施。今回は1月21日~2月21日に行った。新型コロナウイルスの影響で昨年度から調査方法を面接から郵送に変更している。全国16歳以上の個人を対象とし、有効回収数は3579人(有効回収率59.7%)。

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