総合的な学習の時間を活用し、近隣地域や開発途上国の課題解決に取り組んでいる東京都武蔵野市の私立聖徳学園中学・高等学校(伊藤正徳校長、全校生徒937人)で9月29日、中学2年生による「自分たちのSDGs手帳」制作プロジェクトが始まった。この日は、協力する手帳メーカー「伊藤手帳」(本社:名古屋市)の工場とオンラインでつなぎ、手帳が完成するまでの過程を見学したほか、社長の話を聞くなどして、手帳づくりの参考にした。今後はグループに分かれ、具体的な中身を考案。最優秀グループの手帳は伊藤手帳が製品化し、中学3年時の総合的な学習の時間に行う地域課題解決に向けた行動計画を立てる際に活用するという。
同校はグローバル人材の育成につなげようと、高校2年時の総合的な探究の時間に産学連携で、開発途上国が抱える問題の支援策を考え、実行するカリキュラムを通年で行っており、「教育現場におけるSDGsの達成に資する取り組み」の好事例として、文科省のホームページで取り上げられている。中学2年時はその前段階として、企業を外部講師として招いて実社会の理解を深めており、このプロジェクトもその一環で行われた。
この日、生徒らは最初にカレンダーが印刷された折本を自分たちで実際に折って、1枚の紙から手帳の冊子になるまでを体験。悪戦苦闘しながら手を動かし、手帳を完成させた。その後、同じ作業が機械で製本される様子をオンラインで見学した。
手帳の仕様やデザインの考案には、タブレット端末に搭載されている画像処理ソフトを使うなど、同校はICT教育にも力を入れている。一方で、伊藤校長は「デジタルだけでは生徒の思考がバーチャルに偏る可能性がある。アイデアを形にする上では、ものづくりのリアルな現場も学んでもらう必要がある」と話す。
伊藤手帳の伊藤亮仁社長は、生徒からの「今までで一番売れた手帳は」という質問に対し、上下2段に分かれて開くことで、月間と週間のスケジュールが同時に確認できる手帳を紹介。また制作にあたっては「スケジュールや目標管理、日記など手帳にはいろいろな役割があり、また大きさや紙の質感なども自由に決められる。なんのために使うかをしっかり考えてデザインしてほしい」とアドバイスを送った。
授業終了後、王雨萱さん(中学2年)は「コンパクトだけれど、胸ポケットに入れても滑り落ちないような吸着性のある素材を表紙にしたい」とアイデアを披露した。また、手帳には機能性やデザイン性だけでなく、SDGsの考えも取り入れる予定で、丸山優綺さん(同)は「いままで思い付かなかったアイデアが聞けて視野が広がった。使い終わった後、手帳以外にリサイクルできるアイデアを考えたい」と話した。
中学3年時の総合的な学習の時間では、これまで武蔵野市で違法駐輪を減らすために、自分たちでポスターを作って掲示したり、昭島市の魅力向上につなげるため、ご当地キャラクターの缶バッジを制作したりするなど、生徒が自ら選んだ地域で貢献活動を行ってきた。来年度は完成した手帳に計画やスケジュールを記入。より効率的な課題解決に役立てる。