臨時国会は10月5日、衆院本会議で代表質問が行われた。子供施策関連の質疑では、静岡県牧之原市の認定こども園で送迎バスに置き去りにされた園児が死亡した事件について、岸田文雄首相は「安全装置の義務化と支援措置を含む緊急対応策を講じていく」と述べ、政府として改めて同様の事件の再発防止に強力に取り組む姿勢を明確にした。
質問に立った西村智奈美議員(立憲民主)は、園の送迎バスに置き去りにされた園児の死亡事件が昨年7月の福岡県に続いて発生したことに触れ、「保育所を所管する厚労省の保育所保育指針、幼稚園を所管する文科省の教育要領、施設整備指針などには(送迎バスについて)何の基準もない。昨年、国は安全管理の徹底を都道府県に周知したが、実際には丸投げとなったために事故が繰り返されたのではないか」と指摘。
国が策定を予定している送迎バスに関する安全管理マニュアルだけではヒューマンエラーを完全に防ぐことはできないとして、野党共同で児童の置き去り防止装置の設置の義務付けと全額国庫補助、認定こども園等の人的体制の充実などを内容とする法案の提出を検討していることを明らかにした。
これに対して岸田首相は「政府として2度とこうした悲劇を繰り返すことがないよう、安全装置の義務化と支援措置を含む緊急対応策を講じていく。昨年の事故後に各施設において安全管理を徹底するよう周知が行われ、引き続きこうした取り組みを促していきたい。政府としてはできるだけ早く実効的な対策を実施していくことが重要であると考えている」とした。
さらに「悲惨な置き去り死の背景に保育、幼児教育の現場の待遇の低さ、人員不足などの構造問題もあるのではないか」という問いには、「幼児教育、保育人材の確保も重要な課題と考えており、こども政策担当大臣を中心に関係府省が引き続き連携しつつ取り組んでいく」と、送迎バス問題の解決に向け人員配置についても検討する姿勢を示した。
この問題に関して国は、すでに送迎バスに対する安全装置の設置義務化の方針を明らかにしており、運行上の安全管理マニュアルの策定、安全装置改修支援、登園管理システムの普及などの緊急対応策を10月中に取りまとめることにしている。現在、送迎バスを運行している園では緊急点検が行われており、その結果が近く公表される予定。
また、この日の質疑では、上川陽子議員(自民)から来年4月に発足するこども家庭庁に関して、子供真ん中社会の実現のためには恒久財源によって予算を拡充する必要があるとの指摘があり、岸田首相は「今後の子供政策に関する予算については、こども家庭庁のもとで子供の視点に立って必要な子供政策が何かをしっかり議論した上で体系的に取りまとめ、社会全体で費用負担の在り方の検討をすることと合わせて、子供政策の充実に取り組んでいく」と従来の答弁を踏襲した。