教科書会社「大日本図書」の幹部らと会食し、飲食代などを全額支払ってもらったとして、茨城県五霞町の教育長が10月7日付けで辞職した。これを受け、永岡桂子文科相は10月11日の閣議後会見で、「文科省としても、大変重く受け止めている」と述べ、再発防止に向けて調査と指導を徹底する意向を示した。
辞職したのは、五霞町の倉持伸樹教育長で、同町によると、今月3日に倉持教育長本人から染谷森雄町長に辞職願が提出された。
大日本図書によると、倉持教育長は7月1日に大日本図書の役員など3人と茨城県内の料亭で会食。倉持教育長ら2人に対し、会社側が1人当たり約9500円の飲食代を支払い、約1600円の菓子も渡したという。同社は会食の目的は倉持氏の校長退職に対する慰労だったといい、教科書採択も含め、利益供与は一切なかったとしている。
教科書協会が自主ルールとして定めている「教科書発行者行動規範」では、教育委員会の関係者は「採択関係者」とされている。さらに、禁止される行為の具体例として、「採択関係者に対する金銭や物品の提供」を挙げている。
五霞町によれば、倉持教育長の辞職願を受け、同町は3日と5日の2回、懲戒等審査会を開催。「教育長は辞職相当」という意見をまとめ、町長と同町教委の同意を得て、7日付で辞職したという。
教育長の辞職を受け、染谷町長は11日までに、同町のホームページにコメントを掲載。改めて陳謝するとともに、「今後は、再発防止と更なる綱紀粛正に努めるとともに、教育行政の継続を図るべく、私の職務の中でその責任を誠心誠意果たす」とした。
また、永岡文科相は11日の閣議後会見で、「教科書は全ての児童生徒が必ず使用するものであり、その選択には高い公正性と透明性が求められる」とし、教科書会社や教育委員会に、「採択の公正確保に関する文科省通知」を徹底するよう求めた。
同通知には、「留意すべき事項」として、採択関係者に対して、採択の勧誘の目的もしくはその疑念を生じさせる可能性がある形での、金銭などの利益の供与や申し出を絶対に行わないことと記しているほか、採択関係者の自宅訪問といった、過度な宣伝活動も行わないように求めている。