教員採用の早期化・複線化 志望者の負担増や効果に懸念の声

教員採用の早期化・複線化 志望者の負担増や効果に懸念の声
教員の在り方について、文科省がまとめた中間まとめに対するヒアリングを行った中教審のオンライン会議
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 教員の養成・採用・研修の見直しに取り組んでいる、中教審の教師の在り方特別部会基本問題小委員会の第10回会合が10月13日、オンラインで開かれた。この日は、文科省が10月に提示した中間まとめについて、各都道府県や自治体の教育委員会、小中高や特別支援学校の校長会の代表者らに対しヒアリングを行った。教員人材の確保についてさまざまな意見が述べられ、このうち、教員採用選考試験の実施時期の早期化・複線化については、速やかに検討を進めてほしいという声が挙がった一方、教員志望者への負担を懸念する声や教員の処遇改善を通した魅力向上にも触れるべきとの意見が聞かれた。

 この日は▽日本教育大学協会▽全国都道府県教育委員会連合会▽指定都市教育委員会協議会▽全日本私立幼稚園連合会▽全国連合小学校長会▽全日本中学校長会▽全国高等学校長協会▽全国特別支援学校長会――が、文科省の中間まとめについて意見や要望を述べた。

 文科省の中間まとめでは教員採用選考試験について、7月に一次試験が始まるスケジュールが20年以上、大きく変わっていない一方、民間企業においては、学生に内々定を出す時期が早期化しており、内々定解禁日である6月1日までに、就職活動を事実上終了している学生が増加していると指摘。早期化や複線化について検討する必要があるとしている。

 また、永岡桂子文科相も10月3日の閣議後会見で、文科省と各教育委員会などによる協議会を10月中に立ち上げ、早い自治体では2024年度から新しい教員採用選考の仕組みをスタートさせる見込みを明らかにしている。

 一方、採用試験の早期化・複線化は、一部の自治体のみが行うと、他の自治体と重複合格する可能性があり、辞退者が多く発生する懸念がある。そのため、中間まとめでは国と任命権者が協議しながら検討を進めていくことが必要であるとしている。

 新潟県教委の佐野哲郎教育長は、教員志願者が民間企業や他の公務員に流れるのを防ぐために、採用試験の時期を早めるのは有効だとする一方、「教員を第一志望としている受験者にとっては、準備期間が短くなることに不安を感じる者も多い」と述べ、実施時期の前倒しを考える場合は、試験内容の見直しも併せて検討し、受験者の負担に留意するよう求めた。

 大阪市教委の多田勝哉教育長は「採用選考の在り方の改善だけでは、教員不足の解消に限界がある」と強調。給特法の見直しといった、教職の魅力を向上させる政策を国が実施することがより重要であるのを、中間まとめで触れるべきとした。加えて、採用試験の前倒しについては、国が先導して時期を調整するよう求めた。

 これらの意見について、木村国広委員(長崎大学教育学部・大学院教育学研究科教授)は「志願者の減少の背景の一つに教員採用スケジュールがあるとすれば、一刻も早く解消し、学生にとって、教職が企業と他の就職先と同じステージの上で選択できる環境を確保していくことがはじめの一歩と考える」と述べた。

 また、松田悠介委員(Teach For Japan 創業者)は「本当に教員になりたい人は採用のタイムラインがどうであろうと教職を目指す」と述べ、採用倍率の低下は仕事に対する魅力低下が大きな要因になっているとし、多田教育長の意見に同調した。その上で、現在進められている給特法の一部改正や他の部会で進んでいる働き方改革について、中間まとめに追加で記載することを検討するべきとした。

 全国連合小学校長会の荒川元邦常任理事は優れた人材の確保には、教員になるメリットを示す必要があると指摘。2003年度採用者まで適用されていた、教員になれば日本学生支援機構の奨学金が免除になる「返還特別免除制度」のような、優遇措置を検討する必要があるとした。

 全日本中学校長会の平井邦明会長は、教育実習の在り方について言及。中間まとめで記された全ての学生が一律に、教職課程の終盤に教育実習を履修する形式を改め、柔軟な履修形式を認めるべきという点について、「学校現場の負担が増加することが想定されるが、教職に意欲のある人材確保のためには優先すべき」と賛成した。加えて、学校体験活動について、部活動指導員やICT支援員など多様な人が教育に関わっていることから、学ぶことが大きいとし、積極的な単位認定を求めた。

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