政府は10月14日、自殺対策の指針となる新たな自殺総合対策大綱を閣議決定した。コロナ禍で小中高生の自殺者が増えたことについて「非常事態はいまだに続いている」とし、子供や若者の自殺対策を強力に推進することが必要だと指摘。いじめへの対応や長期休業明けの支援などの対策のほか、来年4月に設立が予定されているこども家庭庁と、文科省・厚労省が連携して体制整備を進めることなどが盛り込まれた。
自殺者総数は2003年の3万4427人をピークに減少傾向に転じ、19年は最少の2万169人となったが、コロナ禍に見舞われた20年には11年ぶりに増加した。また児童生徒の自殺者数は、自殺者総数が減少する中でも増加傾向にあり、20年に499人(前年399人)と大幅に増えて過去最多となった後、21年も473人と高止まりした。
自殺総合対策大綱は5年ごとに見直される。今回の大綱では旧大綱に続き、当面の重点施策の一つに「子供・若者の自殺対策を更に推進する」という項目を設け、▽いじめを苦にした子供の自殺の予防▽学生・生徒などへの支援の充実(長期休業前後の自殺予防、タブレット端末の活用による自殺リスクの把握やプッシュ型の支援情報の発信など)▽SOSの出し方に関する教育などの推進▽若者の特性に応じた支援の充実▽子供・若者の自殺対策を推進するための体制整備(こども家庭庁との連携)――などを盛り込んだ。
また若者の「自発的には相談や支援につながりにくい傾向がある一方で、インターネットやSNS上で自殺をほのめかしたり、自殺の手段を検索したりする」「支援機関の相談窓口ではなく、個人的なつながりで、友人などの身近な者に相談する」といった特性を踏まえ、ICTを活用したアウトリーチ策や情報提供を充実させることなどを明記した。
学校では、相談体制の充実のため「保健室やカウンセリングルームなどをより開かれた場として、養護教諭などの行う健康相談を推進するとともに、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなどの配置および常勤化に向けた取り組みを進める」とした。
また子供と日々接する教職員に対しては、引き続き「SOSの出し方を教えるだけではなく、子供がSOSを出しやすい環境を整えることの重要性を伝え、また、大人が子供のSOSを察知し、それをどのように受け止めて適切な支援につなげるかなどについて普及啓発を実施するため、研修に資する教材の作成・配布などにより取り組みの支援を行う」とした。
さらに「自殺念慮の割合が高いことが指摘されている性的マイノリティーについて、無理解や偏見などがその背景にある社会的要因の一つであると捉えて、教職員の理解を促進する」という点も前回に続き盛り込まれた。