新たに「公共」が始まるなど、主権者教育の充実が図られる新教育課程で学ぶ高校1年生に向けて、埼玉県立蓮田松韻高校(早川光男校長、生徒399人)では10月20日に、学年全体で社会の問題を身近なこととして捉えながら、主権者意識を高める授業が行われた。主権者教育に取り組むNPO法人「NEXT CONEXION(コネクション)」のメンバーである大学生らが講師となり、生徒らは正解のないさまざまな現代的な問いについて対話した。
授業は2部構成で、最初にNEXT CONEXION常務理事で総務省主権者教育アドバイザーの越智大貴さんからの講演を聴いた後、生徒は6つのテーマに分かれたプログラムの中から2つを選択するワークショップに参加した。
講演で越智さんは「政治とは人々が互いに関わり合う場の利害を調整し、意思決定をすることという意味があるが、人々が互いに関わり合う場は結構身近にないだろうか。今日は1年生全員がここに集まっているが、文化祭や体育祭をどうするかといったことで利害を調整して意思決定をしていないだろうか。身近なところに政治があるということを知っておいてほしい。そして、身近なところで政治のトレーニングをすることが大事で、それが主権者教育だ」と、この日の活動の狙いを説明。
学び合いのポイントとして▽Listen(いろいろな人の話をよく聞く)▽Open mind(いろんな考えを認め合う)▽Voice(遠慮せず質問し、考えを伝え合う)▽Enjoy(学び合うことを楽しむ)――の「LOVE」を意識することをアドバイスした。
その後、生徒らは希望したテーマごとにワークショップを体験した。越智さんが担当した教室では、綿花栽培が盛んで自然も豊かな国で起きた大統領選挙を想定し、経済優先派の候補と環境優先派の候補のどちらに投票するかをグループごとに議論。その際、必ず自分の意見を述べた上で、多数決以外でグループとしてどちらの候補を支持するかを決めなければならないため、生徒は各候補の主張を分析しながら、メリット・デメリットをさまざまな角度から検討していた。最後に越智さんは、捨てられた服が山のように積まれた「服の墓場」と呼ばれている場所の写真を生徒らに提示し、さまざまな視点から学び、行動することの大切さを伝えた。
このワークショップに参加した吉田藍那(らんな)さんは「服の墓場の写真を見て、最後にどうなるかを考えて使うようにしなければいけないと思った。大人になったときに、環境問題について日本だけでなく世界への影響も考えられるようになりたい」と感想を話した。
「公共」を担当し、今回の授業を企画した神長(じんちょう)真志教諭は「子どもたちが自分から、それぞれのシチュエーションを踏まえて発言していたと思う。教師も生徒と一緒にこうしたテーマで話し合えたことは収穫だった。これを皮切りに『公共』などでも外部連携をやっていきたい」と手応えを感じていた。