オンライン授業に利点と課題 文科省全国学生調査

オンライン授業に利点と課題 文科省全国学生調査
全国学生調査の結果について説明する文科省担当者
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 文科省は10月21日、大学生に在学中の学びの実態や身に付けた力などについて聞いた2021年度「全国学生調査」の結果を公表した。コロナ禍におけるオンライン授業について、学生自身が地理的、空間的、時間的な制約の少ない利点を感じている一方で、対面授業に比べて教員や他の学生とのやりとりがしにくいという課題を感じていることが明らかになった。

 本調査を前にした試行調査で、19年に続いて2度目。学生たちの大学での学習の様子を詳細に調査することで、大学自身の教育改善や国の政策立案に役立てることを狙いとしている。文科省と国立教育政策研究所が共同で今年1月31日~2月28日に実施した。前回は3年生を対象としていたが、今回は2年生と4年生を対象とした。質問は選択式で60問(前回36問)、自由記述で2問(前回同)。調査には全国582大学が参加し、合計11万人余りからインターネットで回答があった。

 コロナ禍で行われたオンライン授業について、同時双方向型が対面授業と比べてよかった点は「自由な場所で授業が受けやすい」(51%)が最も多く、次いで「自分のペースで学習しやすい」(32%)、「レポート等の課題に取り組みやすい」(23%)が続いた。オンデマンド型では「自分のペースで学習しやすい」(72%)、「自由な場所で授業が受けやすい」(62%)、「レポート等の課題に取り組みやすい」(40%)の順だった。

 逆によくなかった点について同時双方向型は「他の学生とのやりとりがしにくい」(42%)、「映像・音声や通信環境の影響で授業が受けにくい」(41%)、「疲労を感じやすい」(40%)。オンデマンド型は「教員とのやりとりがしにくい」(44%)、「他の学生とのやりとりがしにくい」(40%)、「レポート等の課題が多い」(39%)の順だった。

 学生は授業に取り組む場所や時間などに縛られないというオンライン授業のよさを享受しながらも、教員や仲間と直接コミュニケーションが取れないもどかしさも感じているという結果となった。文科省では今後の課題として、オンライン授業の質保証に向けた取り組みが求められるとしている。

 大学教育を通じて身に付いた知識や能力については、「専門分野に対する知識・理解」が「身に付いた」「ある程度身に付いた」を合わせて86%、文献・資料を収集・分析する力」が同79%、「将来の仕事につながるような知識・技術」が同76%だった。それに対して、「外国語を使う力」に関しては同30%と低く、多くの学生が外国語の学習成果を実感できていないことが分かった。

 また1週間の生活時間を聞いた質問では、「授業への出席」が2年生で「16時間以上」が66%、4年生で「5時間以下」が62%。「予習・復習・課題など授業に関する学習」は「5時間以下」が2年生で42%、4年生で75%だった。4年生は授業外で卒論や卒業研究などに多くの時間を費やしているとみられるのに対して、2年生の授業に関する学習時間が短いことについて文科省では、学期末の試験結果のみで単位の認定が行われることから学生が過剰な単位登録をしていることが背景にあるとみて、今後の考慮すべき課題としている。

 文科省は今後、24年度に行う予定の本調査に向けて再度試行調査を実施することにしており、24日には有識者会議を開き、今回の設問内容や回答状況を踏まえた実施時期などの検討を行った。

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