小6の担任の不適切指導が関連 中1自死で報告、熊本市

小6の担任の不適切指導が関連 中1自死で報告、熊本市
iStock.com/SB Arts Media
【協賛企画】
広 告

 2019年に熊本市で起きた、当時中学1年生だった男子生徒の自死について調査をしていた同市の第三者委員会は10月24日、この男子生徒が小学6年生だったときの担任教諭による体罰や暴言などの不適切な指導と、抑うつ状態との関連を認める報告書を公表した。市教委の調査で、担任は計40件の体罰や暴言、不適切な指導などが確認されており、報告書では管理職がこの担任の教員に適切に指導して言動が是正されていれば、生徒の抑うつ状態の発症や増悪は防げた可能性があるとした。

 中学校の生徒や小中学校の教職員らへのヒアリングなどを基にまとめられた報告書によると、男子生徒は小学6年生になってから間もなく、トイレの時間が長くなったり、円形脱毛症が出たりするなどの行動の変化がみられるようになり、睡眠や食欲にも影響が出るようになっていた。

 生徒の変調の背景として、報告書では、小学6年生のときの担任が入学式の準備中に別の児童の胸ぐらをつかんだり、返事が小さいと壁に向かって「はい」と10回言わせたりするなど、児童に対して威圧的だったと指摘。この生徒も当時、担任から叱られることに相当のストレスを感じていたことは確かだとした。

 さらに3学期になると、この生徒が給食委員会のノートに「死」「絶望」「呪」などと書きつけているのを別の教員が発見し、管理職に報告していたが、当面は見守ることとし、保護者には伝えていなかった。この頃には、保護者から教育長に対して、担任の体罰と不適切指導への処分や再発防止を求める嘆願書が提出されており、後に市教委が調査したところ、計40件の体罰や暴言、不適切な指導が明らかとなっている。また、担任は前任校でも児童への体罰で管理職から指導を受けていたほか、言動によって精神的な不調を訴える同僚の教職員もいたことが確認されている。

 生徒は中学校に入学して間もない19年4月、14階建てのマンションから転落し、死亡した。

 報告書では、この生徒が医療機関を受診していなかったため、うつ病と診断はできないとしつつ、調査で明らかになった事実から、遅くとも小学6年生の3学期ごろには重篤な抑うつ状態にあったことが推定できると分析。当時の担任の不適切な指導で複数の児童や教職員に精神的・身体的な影響が出ており、間接的に多くの児童にも影響していたと考えられるとして、この生徒の「抑うつ状態の発症や増悪に強く影響した蓋然(がいぜん)性が高いと言える」と結論付け、管理職が担任に適切な指導を行い、言動が是正されていたならば、この生徒の抑うつ状態の発症や増悪を防げた可能性があったとした。

 この担任の教員に対する処分について、市教委の担当者は「市教委で認定した40件の不適切な指導についての処分も検討しているが、報告書にそれ以外の不適切な指導が書かれているかどうかも含め精査し、報告書の中にこれまで認定されていなかった不適切な指導があれば、体罰等審議会に諮る」と話している。

広 告
広 告