DXの本質は技術ではなく組織のマインド――。超教育協会のオンラインシンポジウムが10月26日に開かれ、さまざまなものがインターネットを介して相互接続される仕組み「IoT(Internet of Things)」の世界標準規格を定義したTRONプロジェクトのリーダーである坂村健東洋大学情報連携学部学部長が「企業・教育機関のDXをいかに進めるか」をテーマに講演した。坂村学部長は高校生に向けて「自分の頭で勉強する気持ちがなければ大学に来る意味がない」とメッセージを送った。
2017年に開設された同学情報連携学部は、校舎全体にIoTデバイスが5000個も備わっているスーパーインテリジェントビルで、少人数教育を重視したり、開発した技術を校舎ですぐに試したりできるような設計になっている。坂村学部長は「重要なのは連携。一人で全部のことをやるのは無理だから、チームを組んで問題解決をしないといけない。異分野の人と話ができることだ。文・芸・理融合などと言われているが、実際に日本の大学の中で文理融合と名乗っていても、本当に文理融合をやっているかというと難しい。トラディショナルな大学で文理融合をやろうとすれば、もともとある学部から人を集めることになる。そうするとなかなかうまくいかない。それに比べて、本学部は全く何もないところから、新しい学部としてこういう考えに賛同する人が来てくださいとやっている」と、文理融合の課題を指摘した。
その上で、坂村学部長は日本でなぜDXが進まないのかについて論を展開。「日本では、コンピューターのプログラムが書ける人がたくさんいる組織でもDXはうまくいっていない。なぜかと言えば、DXはテクノロジーの問題だけでなく、組織改革ややり方の改善。今までのやり方を、コンピューター使ってやればいいと勘違いしている人が組織にたくさんいるとDXはできない」と強調し、閉鎖的で、欠陥があれば現場が運用の工夫でカバーしがちな日本の組織は、世界の変化から取り残されてしまうと警鐘を鳴らした。
また、後半の質疑応答で高校生に学んでおいてほしいことを尋ねられると、坂村学部長は「大学の選び方が偏差値を基準にしていて、大学や学部の内容を見ないで決めている学生が多い。そういうのはおかしいと思うし、偏差値だけで大学を選ぶと駄目だ。まず、大学は義務教育ではない。日本では大学に行く気もないのに来ている人が多いのではないか。高校のときにどうしたらいいかといえばマインドだ。何かの科目をちゃんと学ぶということ以前の問題として、自分の頭で考えて勉強しよう。勉強したいから大学に行きたいという気持ちがないといけない」と、学びへの意欲の重要性を呼び掛けた。