中教審の「幼児教育と小学校教育の架け橋特別委員会」の第9回会合が10月31日、オンラインで開催された。文科省が今年度から始めた「幼児教育推進体制を活用した地域の幼児教育の質向上強化事業」に採択された自治体のうち、秋田県、静岡県、堺市がその取り組みを紹介。特別な配慮を要する子どもをスムーズに幼稚園や認定こども園などから小学校につなげるための工夫や、県と市のそれぞれのアドバイザーの連携方法などについて、各自治体の担当者が報告した。
静岡県では、外国籍や発達障害など特別な配慮を必要とする幼児が増加しており、各施設が対応や支援に苦慮している現状から、幼児教育センターの人材を拡充。非常勤のソーシャルワーカーとインクルーシブ支援員(個別指導員)に加え、公認心理師や日本語指導コーディネーターといった多業種からなる「幼児教育サポートチーム」を新設。施設を訪問し、助言できる体制を整えた。
同県の担当者は「幼児教育の専門以外の専門性を持つ人材を活用し、特に私立や保育事業を巻き込んだ推進体制の構築を図る」と述べた。
堺市は保育所、幼稚園、小学校合同研修会の一環として年3回行われる、支援を要する子どもの就学に向けた情報交換の内容を紹介。各施設の希望を基に幼児教育センターが調整し、小学校ごとに設けられたブースで話し合うというもので、一度に複数園からの情報収集ができるというメリットがある。
一方で、同市の担当者は「たった1人しか行かない、少し離れた小学校の先生と、どうしても子どもの育ちについて情報交換したいという場合がある」と説明した上で、時間調整の難しさも口にした。
秋田県は県内各市町における事業内容の啓発や実施市の好事例を発信することで、市町村のアドバイザーが2018年度の3市から、現在は8市に拡充したと成果を報告。その上で、県がより効果的に市をバックアップできるよう、県北部に位置する北秋田市と南部に位置する横手市にサテライトセンターを設置したと説明した。一方で、事業を推進するミドルリーダーの育成を課題に挙げ、キャリアステージに応じた研修などを通し、人材育成を支援すると語った。
文科省の「幼児教育推進体制を活用した地域の幼児教育の質向上強化事業」は、認定こども園や幼稚園など、複数の施設類型がある幼児教育から小学校教育への円滑な接続や、特別な配慮を必要とする幼児への対応などを支援するために、今年度から開始。幼稚園教諭と保育士などに対する研修機会の提供や相談、市区町村や幼児教育施設への助言・情報提供などを担う幼児教育センターが配置されているなどの条件で、採択された自治体には幼児アドバイザーの配置に必要な人件費や研修・巡回訪問の旅費といった経費が補助されている。
文科省によると、幼児教育センターを設置している都道府県は今年度時点で30府県。このうち、24府県において、今年度補助金が支給されている。事業は来年度も継続する方針で、概算要求ではさらなる採択地域の増加を見込んで、今年度より1億円多い5億円を計上している。