来年度から公立中学校の休日の運動部活動が順次、地域移行されるのを前に、すでに部活動改革を進めている各地の事例集を11月1日、スポーツ庁が公表した。地域移行は部活動が始まって以来の大改革で、地域によっては教師に代わる人材や運営団体の不足などが指摘される中、そうした課題の克服に向けての参考となる事例が紹介されている。
部活動の地域移行は、少子化の進行と指導する教員の働き方改革の狙いからスポーツ庁の有識者会議で検討され、6月に提言としてまとめられた。来年4月から3年かけて休日の活動を地域に移行させ、平日についても準備でき次第、同様に移行させるとしている。
事例集としてまとめられたのは、2021年度にスポーツ庁が委託し全国約100自治体で実施された「地域運動部活動推進事業」で、地域移行にあたっての課題とされる指導者の確保や運営団体の確保、費用負担の在り方などの実践研究。
この中で指導者の確保については、指導者の本業で最も多かったのが、「現職の学校の教職員」で31%。次いで「民間企業に所属する競技・指導経験者」(29%)、「地域スポーツクラブの職員」(9%)、「公務員(学校職員を除く)」(6%)だった。学校外での活動となるために発生する指導者への謝金については、時間単位で支払われているケースが70%を占め、平均時間給は2292円、次いで回数単位が14%を占め、平均額は3935円だった。
指導者の確保においての問題点としては、「指導者が地域に少なく新規の発掘が困難」「競技経験や知識と教育的配慮や安全管理意識の双方を持つ指導者が不足」「兼職兼業の許可の範囲などの考え方が整理されておらず活用が進んでいない」「教師が兼職兼業の負担をどのように感じているか正確に把握できない」などが指摘された。
これらの課題の克服に関しては、「スポーツ団体だけでなく、小学校、高校の教師や高校生、大学生、保護者などと幅広く連携する」「教育的配慮など指導に必要な資質・能力を得る研修を実施する」「人材バンクへの登録を促し、効率的に現場の要望とのマッチングを行う」などの取り組みが行われた。
また、これまでの学校に代わって部活動の受け皿となる運営団体については、「行政機関・教育委員会」が最多の35%を占めており、次いで「地域スポーツクラブ」(27%)、「民間企業」(10%)、「競技団体」(9%)だった。その際の課題としては「地域内で受け皿となる組織が見つけられない、存在しない」「受け皿となる組織の体制・運営力の不足」「財政面での持続可能性が不透明」などが指摘された。これらの課題克服に関しては「スポーツ関係団体のネットワークの活用や公募」「新規組織の設立」などの工夫がされていた。
地域移行で生徒が負担することになる費用については、1人当たり年間1万7581円だった。内訳は会費9112円、保険料4679円、入会金653円、その他3137円で会費が5割以上を占めていた。