来年度の東京都立高校の入試に向け、11月27日に初めて実施される英語スピーキングテスト「ESAT-J」について、永岡桂子文科相は11月4日の閣議後会見で、「学習指導要領の趣旨を踏まえた授業改善に生かしていく観点からは、大変意義がある」と評価した。一方、公立高校入試への英語スピーキングテスト導入については「実施者である各都道府県の教育委員会等が判断するもの。課題への対応を含め、適切に判断を行い、実施していただきたい」と述べ、都道府県教委の判断に委ねる考えを改めて示した。
永岡文科相は、英語スピーキングテストの実施について見解を問われ、まず「グローバル化が急速に進展する中で、国内外のさまざまな場面で英語によるコミュニケーションを取ることが必要ということは、もう明らか。英語で聞くこと、話すこと、読むこと、書くこと。これらの4技能を総合的に育成することが大変重要と思う」と応じ、スピーキングを含めた英語4技能を育成する必要性を強調した。
次に都教委のESAT-Jについて、「都立高校の入学者選抜のみならず、その結果を今後の指導の改善に活用することも目的とされていると承知している」と指摘。「生徒の話すことの能力を測り、学習指導要領の趣旨を踏まえた授業改善に生かしていく観点からは、こうしたスピーキングテストを活用することは大変意義があることだと思っている」と述べ、英語4技能の育成を目指す学習指導要領に沿ってスピーキングテストを中学校や高校の授業改善に生かそうとする都教委の取り組みを高く評価した。
一方、こうした英語スピーキングテストを高校入試に活用することには「(高校)入学者選抜の実施方法等については、実施者である各都道府県の教育委員会等が判断するもの。英語スピーキングテストを導入するにあたっての課題への対応も含め、適切に判断を行い、実施をしていただきたいと考えている」と説明した。
都教委のESAT-Jを巡っては、「スピーキングが苦手な生徒は、あえて受験しない方が有利になるのではないか」といった不安の声が上がり、都教委は今年5月、不受験者を「病気・けがなどやむを得ない理由のある場合」か、「実施日時点で東京都の公立中に在籍していない場合」に限るとするとともに、不受験者に対する仮の得点の算出方法を公表した。永岡文科相の説明は、こうした課題への対応を含め、英語スピーキングテストの高校入試への活用については、入試の実施者である都道府県教委が判断すべきだ、とする従来の見解を改めて示したものとなっている。
今年度実施する都立高校入試では、学力検査の得点と調査書点の合計(1000点満点)に、今年11月27日(予備日12月18日)に実施するESAT-Jの結果を加え、総合得点を算出することになっている。ESAT-Jは都教委とベネッセコーポレーションが共同で開発・実施するもので、タブレット端末を使用し、解答音声を録音する方式。都教委では、出題内容の妥当性や実施運営を検証するため、2019年度から都内公立中学校の一部でのプレテストを開始した。昨年度には対象を都内の全公立中学校(約6万4000人、592校)に拡大してプレテストを実施したところ、平均スコアが53.7となり、都教委は「(国が)到達度の目標とするCEFRのA1レベル以上に相当する生徒は8割を超える」と分析している。
児童生徒の英語力について、政府は第3期教育振興基本計画(18年~22年)で、国際的な語学力基準「CEFR」のA1レベル(英検3級)相当以上の英語力を持つ中学3年生と、A2レベル(英検準2級)相当以上の高校3年生の割合を、それぞれ全国で5割以上にする政府目標を掲げている。しかし、5月18日に文科省がまとめた21年度の英語教育実施状況調査によると、目標を達成している割合は中学3年生で47.0%、高校3年生で46.1%といずれも未達だった。政府目標の50%を達成した自治体は、中学3年生で20都県・政令市、高校3年生で8都県だった。東京都は中学3年生で54.4%、高校3年生で50.0%が政府目標に届いていた。一方、達成している割合が最低の自治体では中学3年生で31.9%、高校生で36.3%にとどまっており、自治体間の差が一段と顕著になっている。CEFRでは、「読む」「書く」「聞く」「話す」の英語4技能が問われる。