教員の養成・採用・研修の制度改革に関する中教審の「『令和の日本型学校教育』を担う教師の在り方特別部会」に対し、日本教育経営学会はこのほど、特別部会で議論されている校長の役割や求められる資質・能力などについて、再考を求める意見書を提出した。特に、特別部会の中間まとめで提言された教職員の研修の受講に関する校長の指導助言については、記録された研修履歴だけで教職員の学び全体を把握できるとは考えられず、むしろ同僚の教職員の方が校長よりも実際的な研修ニーズや必要性を把握できる立場にあると指摘。こうした教職員の同僚性に基づく受講奨励の仕組みを軸に検討すべきだとした。
意見書では、特別部会が10月に示した中間まとめを基に、▽校長職の全体性・代表性▽校長に求められる資質・能力▽所属する教職員への受講奨励――の3つの観点から、学校経営や校長職の在り方に重大な影響を及ぼすとみられる内容について、再検討を求めている。
校長職の全体性・代表性について、中間まとめでは校長に求められる基本的な役割として、学校経営方針の掲示と組織づくり、学校外とのコミュニケーションの3つに整理されたが、何を根拠にしてこれらの役割を特筆したのかと疑問を投げ掛け、特に組織づくりと学校外とのコミュニケーションは、校長に限らず全ての教職員が担う役割であり、校長の役割は、学校経営方針にとどまらず、効果的な教育課程の編成・実施や、それによる学習保障の責任主体であるべきだと強調。校長は自らの直接的な行為だけでなく間接的な行為についても責任と役割を負っており、学校教育の全体性・代表制を担っていることが本来の役割だとし、学校経営方針の掲示と組織づくり、学校外とのコミュニケーションの3つに集約・大別することは、校長職を矮小(わいしょう)化、閉塞化しているとした。
また、校長に求められる資質・能力では、中間まとめで、従前から求められているマネジメント能力に加えて、さまざまなデータや学校の内外環境に関する情報を収集・整理・分析し、共有するアセスメント、学校内外の関係者の相互作用によって学校の教育力を最大化するファシリテーションが求められているとされていることについて、マネジメント能力を構成するスキルの一部であるアセスメントとファシリテーションが、マネジメント能力と同列に位置付けられているように読み取れ、校長の備えるべき能力の構造的理解を阻んでいるとして、再考を求めた。
今回の中間まとめの大きな特徴でもある、研修記録を活用した校長による教職員への受講奨励に関しては、教職員の多種多様な研修の全てを記録することは相当な手間が掛かることも踏まえれば、実際に記録された研修履歴を基に対象の教職員の総体の学びを校長が把握できるとは考えられないと指摘。むしろ同僚の教職員の方が、校長よりも実際的な研修のニーズやシーズを把握できると考えられるとして、同僚性をベースとしたマネジメントシステムを前提に、受講奨励の仕組みを提起すべきだとした。