部活動地域移行への支援を前倒し 2次補正予算案を閣議決定

部活動地域移行への支援を前倒し 2次補正予算案を閣議決定
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 政府は11月8日夕の持ち回り閣議で、電気代やガス代の抑制策などを盛り込んだ総合経済対策の財政的な裏付けとして、一般会計総額28兆9222億円の2022度第2次補正予算案を閣議決定した。文科省関連は1兆4426億円。学校関連では、23年度から段階的に始まる部活動の地域移行を支援する経費として19億円、運営支援センターの機能強化などGIGAスクール構想の推進に95億円、23年度からの新たな教員研修の体制構築に25億円などを計上した。新型コロナウイルス感染症対策の保健衛生用品の購入や特別支援学校のスクールバスに対する感染リスクの低減などに255億円を積んだ。園児の置き去りを防止する安全装置の財政支援では、幼稚園などを所管する文科省分として78億円を計上。保育所や認定こども園などを対象とする内閣府や厚労省の所管分を合わせると、子供の安全対策として計234億円が盛り込まれた。

 今回の補正予算案は、岸田政権が掲げる「新しい資本主義の加速」を重視した予算編成となっている。政府は近く開会中の臨時国会に提出し、早期の成立を目指す。

 学校教育に関連する部分をみてみると、まず、政府の教育未来創造会議が9月にまとめた工程表に沿い、24年度から高等教育の修学支援新制度の対象を中間所得層にも拡大し、多子世帯や理工系・農学系の学部で学ぶ学生の負担軽減を図るため、その前提として必要になる日本学生支援機構の奨学金業務システムの改修作業に着手する。来年度予算に盛り込まれていた必要経費のうち、25億円を前倒しして計上した。

 23年度から改革集中期間がスタートする部活動の地域移行についても、年度当初からの円滑な実施を図るとして、関係者の連絡調整役となる総括コーディネーターの研修会開催や人材バンクの設置など地方自治体が取り組む移行体制の構築に向けた費用19億円を計上した。内訳は、運動部に15億円、文化部に4億円を想定している。

 学校や教育のデジタル・トランスフォーメーション(DX)についても、引き続き積極的に取り組む。GIGAスクール構想の推進として95億円を計上。デジタル化の課題を抱える学校の相談窓口として、各都道府県で今年度整備を進めてきたGIGAスクール運営支援センターの機能強化や、リーディングDXスクールの先進事例の全国展開、次世代の校務デジタル化実証研究、デジタル教科書を巡る通信環境調査などに取り組む。オンライン上で学習やアセスメントができる「文科省CBTシステム(MEXCBT:メクビット)」の機能改善や、全国学力・学習状況調査のCBT化に向けた準備など、教育DXを支える基盤的ツールの整備や活用に6億円を盛り込んだ。

 教員免許更新制の廃止とセットで23年度から導入される新たな教員研修に向けた体制の構築には25億円を積んだ。オンライン研修コンテンツの充実や、研修成果の確認・評価モデルの開発など研修の高度化を図り、全国的な研修履歴記録システムと各教委・大学が提供する研修コンテンツを一元的に整理して提供するプラットフォームを構築する。

 第8波の到来が心配されている新型コロナ対策には255億円を計上した。学校現場に必要な保健衛生用品の購入、地域の実情に応じた換気対策の実施、特別支援学校のスクールバスに対する感染リスクの低減などに必要な支援を行う。

 幼稚園や保育所などの送迎バスに設置が義務付けられる、園児の置き去りを防止する安全装置の財政支援について、小倉将信こども政策担当相は11日1日、補助の上限単価を18万円とする方針を閣議後の会見で明らかにした。装置の関連経費を含め、子供の安全対策に計234億円が、開会中の国会に提出される今年度第2次補正予算案に計上される。

 静岡県牧之原市の認定こども園で送迎バスに園児が置き去りにされ死亡した事件を受けた子供の安全対策には、文科省、厚労省、内閣府を合わせた政府全体で234億円を盛り込んだ。このうち、幼稚園などを対象とする文科省分は78億円。園児置き去りの再発防止に向け、政府は幼稚園や保育所、認定こども園、特別支援学校などで使用する全ての送迎バス約4万4000台に、置き去り防止のための安全装置設置を義務付けており、今回の補正予算案に計上された経費は安全装置の装備や、登園管理システムや子供の見守りタグ(GPS)の導入に必要な経費の支援に充てる。

 文科省の2022年度第2次補正予算に盛り込まれた初等中等教育関連の主な項目

  • 奨学金業務システムの改修  58億円
     教育未来創造会議の提言に基づき、奨学金制度の運用や奨学金手続きのデジタル化を推進するため、(独)日本学生支援機構の奨学金業務システムの改修を行う。
  • 幼稚園のICT環境整備   8億円
     幼稚園における事務処理の効率化をはじめ、オンラインによる教員研修や保育参観、保育動画の配信やアプリを利用した家庭との連絡など、必要なICT環境整備を支援する。
  • 運動部・文化部活動の地域連携や地域クラブ活動移行  19億円
     部活動の地域連携や地域クラブ活動移行に向けた環境の一体的な整備に向け、2023年度当初からの円滑な実施を図るため、関係者との連絡調整を行う総括コーディネーターの研修会開催や人材バンク設置など、地方公共団体が行う移行体制の構築に必要な経費を支援する。
  • GIGAスクール構想の推進  95億円
     運営支援センターの機能強化、リーディングDXスクールによる先進事例全国展開、学校DX戦略アドバイザーによる重点支援、高等学校情報科支援強化、次世代の校務デジタル化実証研究、デジタル教科書・教材等通信環境調査などの取り組みを集中的に進め、学校DXを加速する。
  • 教育DXを支える基盤的ツールの整備・活用等  6億円
    教育DXを強力に推進する観点から、オンライン上で学習できるCBTシステム(MEXCBT:メクビット)などの機能改善・拡充等を行うほか、全国学力・学習状況調査のCBT化に向けた実施準備として問題作成を実施する。
  • 国民のデジタルリテラシー向上事業  13億円
     誰もが、いつでも、どこでも、デジタル化の恩恵を享受できるようにするため、公民館などの社会教育施設や学校などの場を活用したデジタル講座の実施を支援する。
  • 「新たな教師の学び」を支える研修体制の構築  25億円
     オンライン研修コンテンツの充実や研修の成果確認・評価モデルの開発等による教員研修の高度化を図るほか、全国的な研修履歴記録システムと各教育委員会や大学などが提供する研修コンテンツを一元的に収集・整理・提供するプラットフォームを一体的に構築する。
  • 学校施設等の整備  2579億円
     児童・生徒・学生等の安全・安心の確保、子供たちの多様なニーズに応じた教育環境の向上、学校施設やスポーツ施設などにおける老朽化対策、脱炭素化、耐震対策、イノベーション拠点の整備等を推進するほか、国立劇場再整備などを進める。
    ▽公立学校・社会体育施設 1204億円▽私立学校 94億円▽国立大学・高専等 582億円▽認定こども園 86億円▽国立劇場再整備 500億円▽独立行政法人等 113億円
  • 学校施設の災害復旧等  213億円
     22年発生の福島県沖を震源とする地震や22年8月1日から同月22日までの間の豪雨および暴風雨による災害などにより被害を受けた学校施設・設備等の災害復旧を迅速に進める。▽公立学校・社会教育施設 70億円▽国立大学・高専等 69億円▽私立学校 59億円▽文化財 11億円など
  • 学校等の感染症対策等支援 255億円
     幼・小・中・高・特別支援学校・在外教育施設等における保健衛生用品等の購入などに係る取り組みや、地域の実情に応じた換気対策などの実施および特別支援学校スクールバスにおける感染リスクの低減を図る取り組みなどに必要な支援を行う。
  • こどもの安心・安全対策支援事業 78億円
     子供の安全対策として、子供の送迎用バスへの安全装置の装備や、登園管理システムや子供の見守りタグ(GPS)の導入に係る必要な経費の支援を行う。
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