「登録日本語教員」のたたき台案 新制度の基盤整備など提言

「登録日本語教員」のたたき台案 新制度の基盤整備など提言
取りまとめに向けて「たたき台案」を検討した有識者会議(YouTubeで取材)
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 日本語教師の養成に筆記試験や教育実習を課し、国家資格とする「登録日本語教員」の制度化について詰めている、文化庁の「日本語教育の質の維持向上の仕組みに関する有識者会議」は11月17日、第6回会合をオンラインで開き、これまでの議論を整理し、取りまとめを視野に入れた有識者会議としての検討の方向性の「たたき台案」を協議した。日本語教師の数と質が不足していることから、「登録日本語教員」の制度発足にあたっては、当面の間、教育実習や一部試験の免除などを認める経過措置を設けることを明記。新制度の基盤整備として、地域における日本語教師の養成・研修の拠点整備や関係機関のネットワーク化の推進などを盛り込んだ。

 これまで有識者会議では、日本語教育機関の認定制度や「登録日本語教員」の筆記試験、教育実習、指定日本語教師養成機関の基準などについて検討。それらの意見を反映した「たたき台案」では、大学などで専門人材として日本語教師の養成が行われていても、実際に日本語教師になる人は1割以下にとどまり、日本語教育機関で専門性のある人材が活躍できない状況があること、コロナ禍で日本への留学生が減少し、日本語教師の離職が起きているといった、日本語教師を巡る数と質の課題を指摘し、「登録日本語教員」の制度としての重要性を強調した。

 その上で、国の認定を受けようとする日本語教育機関は「登録日本語教員」の配置を必須とすることが要件となっているものの、十分な移行期間を設定し、実力や実績のある現職の日本語教師が円滑に「登録日本語教員」に移行できるようにするなどの経過措置を設けることを追記した。

 また、「登録日本語教員」の要件となっている筆記試験については、問題解決能力を測るために記述式問題による出題が委員から提案されていたが、試験のコスト面などを考慮して多肢選択式のみとする当初の案を採用しつつ、もう一つの要件である教育実習で問題解決能力などの実践力を習得・評価することとした。

 さらに「たたき台案」では、新たにこれらの制度に必要な基盤整備に関する章を書き起こし、認定日本語教育機関や指定実習実施期間、指定日本語教師養成機関などの情報を多言語で容易にアクセスできる仕組みを検討することや、日本語教育の最新の指導法を学べるような日本語教師養成・研修の拠点を地域ごとに整備し、認定日本語教育機関や自治体、国際交流団体、NPOなどが参画するネットワークを構築することで、「登録日本語教員」の就職支援や処遇改善につなげることなどを提言した。

 この日の会合では、「『登録日本語教員』という新しい資格をつくる目的には、日本語教師の数と質の担保があるが、それらを両立させるためのキーワードが研修体制をきちんと整備することだと思う。特に、採用後の初任の研修では、日本語教育の活動分野別に研修をしっかり受けることが求められるが、『たたき台案』を見ると、あたかも『登録日本語教員』になれば、すぐにどの分野でも活躍できるといったような誤った印象を抱かれないかという記述も見られる」という指摘や、「筆記試験が多肢選択式のみとなるのはやむを得ないが、日本語教師の実践能力をみる教育実習の内実が問われることになる。教育実習の実態をどのように審査し、実践力の保障につなげていくかという制度設計として、具体的な評価規準なども検討すべきだ」「『たたき台案』では、資格制度そのものの評価をどうするかという言及がほとんどない。この制度を持続的にさらに良いものにしていくという視点で、政策の評価をエビデンスベースで行うというようなことを明確に書いた方がいいのではないか」などの意見が出た。

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