「データ化は教員の勘の証明にもつながる」 教育DXを議論

「データ化は教員の勘の証明にもつながる」 教育DXを議論
教育DXをテーマに議論する右から佐藤教授、中室教授、小﨑准教授
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 デジタルハリウッド主催の「近未来教育フォーラム2022」が11月24日、東京都千代田区のデジタルハリウッド大学駿河台キャンパスにて開催された。デジタルハリウッド大学大学院の佐藤昌宏教授と慶應義塾大学の中室牧子教授、奈良教育大学教職大学院の小﨑誠二准教授が、教育のあるべき姿や教育データの活用について議論を交わした。佐藤教授は「いつでもどこでも誰でも質の高い教育を受けられる環境をつくるためにデータが必要だ」と強調した。

 中室教授は教育のあるべき姿について、「例えば、今5点の子も10点に伸ばせるし、80点の子も85点に伸ばせるといった、どのあたりに分布する子も、みんなが能力を伸ばせることが非常に大事だ」と述べた。しかし、現状ではそれが実現できておらず、取り残されている子がいると指摘。「キーワードになるのは、個別最適な学び。テクノロジーの力を使って、みんなが自分に合った教育を探してこられる世界に変えられないかと考えている」と語った。

 佐藤教授は「いつでもどこでも誰でも質の高い教育を受けられる環境をつくるために、データが必要だと考えている。不登校児童生徒が増え続けるなど、教育が届かない子たちがたくさんいる。質の高い公教育をどう届けるかを考えると、デジタルの力を借りるしかない」と話し、「デジタルの得意な部分は、一人一人の状態を可視化したり、分析したり、リコメンドしたりできること。それが個別最適な学びにつながる」と述べた。

 現在の教育のボトルネックについて、中室教授は「子どもたちの認知特性や興味関心は多種多様だ。そうしたときに、例えば学習指導要領や標準授業時数といった制度などが、子どもたちの能力を高める上で制約になっていないか。もう少し緩やかな制度の中で、先生たちの創意工夫や、時にははみ出してしまう子どもたちの学びを支援していけたら。こうした制度や規制は思い切って見直すべきタイミングに来ている」と強調した。

 それを受け、佐藤教授は「学習指導要領や教科書などは、教室や紙の教科書を前提とし、全てアナログの世界でつくられている」と指摘。「時代が変わり、デジタル化しているのであれば、それらもデジタル上でアップデートしていくべきだ」と話した。

 小﨑准教授は学校現場を回って感じることとして、「多くの教員は保護者の理解を得ることに大変さを感じている。地域や社会、保護者も一緒に教育のデジタル化や教育データについて理解をしていかなければならない」と発言。中室教授も「教育データを使うことにどういうメリットがあるのかを、とにかく丁寧に多くの方に伝えていくことが本当に重要だと感じている。個人情報の漏えいなど、いろいろな懸念があることも理解している。しかし、不適切な利用や問題が起こらないようにしながら、教育データを上手に使っていく社会をつくっていかなければならない」と強調した。

 最後に小﨑准教授は「データ化してさまざまなことを見ていけばいくほど、実は教員の勘や経験でやっていたことが正しかったという証明にもつながっている。私たちのやっている教育が正しいのであれば、必ずデータは後追いで示してくれる。そういう向き合い方で、学校現場もしっかり教育データを扱えるようにしていくべきだ」と述べた。

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