学校へのいじめ防止再徹底事項案を公表 文科省協議会

学校へのいじめ防止再徹底事項案を公表 文科省協議会
オンラインで開催されたいじめ問題対策協議会(YouTubeから)
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 小中学校でのいじめの状況が深刻化するなか、文科省のいじめ防止対策協議会が11月28日、オンラインで開催された。24日のいじめ防止対策に関する関係府省連絡会議で示された「早期に対応すべき項目」のうち、学校・学校の設置者に対して、警察との連携や被害児童生徒へのケア、首長部局への支援要請などについて周知を再徹底すべき事項案が示され、議論された。

 協議会は、いじめ防止対策推進法に基づく取り組み状況の把握と検証を行うとともに、いじめの問題に関して関係者間の連携強化を図り、より実効的な対策を講じるため設置されている。文科省の調査によると、学校における2021年度のいじめ認知件数は61万5351件、いじめによる児童生徒の生命にかかわる重大事態の発生件数が705件で、対策に急を要する状況。政府はこれまでいじめ防止にあたって、各府省でそれぞれが所管に応じた対策をとってきたが、これらの知見や情報を結集し、速やかに対応していく体制を整えることが必要と判断され、関係府省連絡会議を設置。同会議で早急に対応すべき項目が示され、協議会で有識者による専門的観点から具体的な対策が検討されることになった。

 学校・学校設置者に再徹底すべきとされた検討項目は、①犯罪行為が疑われる場合の警察連携の徹底など、関係機関との連携強化②被害児童生徒・保護者へのケアと加害児童生徒への指導・支援方策③保護者と学校がいじめ防止対策を共有するための普及啓発方策④いじめの重大事態における総合教育会議の活用と首長部局からの支援――の4点。これらについて協議会で具体的な事項案が示された。

 このうち①では、▽児童生徒の行為が犯罪行為として取り扱われ得るときは、被害児童生徒を守るという観点から学校内で閉じることなく、いじめ防止対策推進法に基づき、警察に相談・通報して連携した対応を取らなければならないこと、学校が相談しやすいよう犯罪に該当する行為の類型を作成すること▽各学校で普段連携を図る警察署との日常的な連携体制を構築し、いじめか犯罪か対応に迷う事案について通報・相談しやすいよう 「学校・警察の連絡員指定制度」を設けることや、警察OBなどの「スクールサポーター」と緊密に連携すること――を盛り込んだ。

 ②では、▽被害児童生徒の心のケアに当たって、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーをはじめ、医療機関とも協力しつつ、2次的な問題を未然防止する対応を徹底▽被害児童生徒が不登校や別室登校になった場合には心のケアだけでなく、学習面でも十分な支援を行うこと▽加害児童生徒に対しては、加害行為の背景や生徒が抱える課題に対して教育的配慮の下で必要な指導を行い、自らの行為を反省させることが必要で、いじめ加害の背景に家庭での虐待などがある場合は生徒に指導だけでなく、適切な支援を行うこと――とした。

 ③については、▽入学説明会や保護者会などを通じて、保護者に対して平時から重大事態調査の目的を含む、いじめ防止対策推進法の趣旨や内容について十分に説明する機会を設けるとともに、 SNSを使った現在のいじめの態様やいじめを発見した時の連絡窓口、相談体制について説明すること▽犯罪に相当するいじめについては、警察へ通報・連絡する場合もあり得るのを事前に説明すること――を求めた。さらに保護者への普及啓発を図るため、学校の設置者が家庭・保護者向けの情報発信を行うことも重要であるとしている。

 ④については、▽地方教育行政法に基づき、いじめの重大事態が発生した際には、総合教育会議を開催し、速やかに首長への報告、協議を行うこと▽重大事態が発生した際に、学校の設置者単独では迅速な調査の実施が困難な場合には、地方自治体の長・首長部局に対して必要な支援を求め、連携して対応すること▽小規模の自治体、学校法人など調査委員の人材の確保が困難な場合は、都道府県で必要な支援を行える体制を構築しておくことが望ましい――などとした。

 続いて事項案についての議論に移り、委員からは「自治体ごとに警察と連携するというのはハードルが高いところもあるので、県警と県教委が協定を結ぶなどして、いじめに対応することが必要」「犯罪行為が疑われる事件が起こってからでないと警察と連携しにくい場合もあるので、普段から生活安全という側面で関わってもらうとよいのではないか。また逆に警察側からもいじめに関して学校との取り組みづらさはないのか聞いてみたい」「文科省の調査で警察への相談・通報が1344件となっているが、この内訳がどうなのか。その中で重大事態はどれぐらいあったのか、具体的に分からないと議論しにくい」「保護者との関係を崩したくないため、積極的に警察に通報しないというケースもあるので、どういうときに通報すべきなのかというラインを国は示す必要があるのではないか」などといった意見が出された。

 協議会ではこの日の議論を踏まえ、12月に予定される次回も再徹底すべき事項案について引き続き検討する。その後、年明けから「重大事態調査に関する事項」について議論を開始する方針。

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