少子化で加速する高校の小規模化「進路の保障を」 中教審WG

少子化で加速する高校の小規模化「進路の保障を」 中教審WG
オンラインで開かれた中教審の「高等学校教育の在り方ワーキンググループ」の第2回会合
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 高校教育の共通性と多様性への対応を検討する中教審の「高等学校教育の在り方ワーキンググループ」の第2回会合が12月1日、オンラインで開かれた。この日は少子化で加速する高校の小規模化について議論。全ての高校で維持されるべき役割として、「生徒の進路保障」が多くの委員から挙げられた。その上で、教員確保などの理由で、習熟度別指導といった個別最適な学びを実現しにくいという課題に対し、遠隔授業による補完や教員が教育に集中できるための外部人材の拡充を求めた。

 

 冒頭、文科省が高校の学級規模の現状について、学校基本調査を用いて説明。それによると、全学年合計で3学級以下の全日制公立高校は2021年度で全体の4.0%となっており、30年前に比べて3.4ポイント増加している=図表。都道府県別に見てみると、北海道が最も多い53校。以下、広島県13校、青森県、福島県、高知県7校、岩手県、長崎県6校となっており、東北や離島・半島が多い地域、中山間地域での増加が目立つ。

 続けて、学級数が少ないことによる学校運営上の課題として、同省が策定した「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引」に記載されている▽加配なしには、習熟度別指導などクラスの枠を超えた多様な指導形態が取りにくい▽クラス同士が切磋琢磨(せっさたくま)する教育活動ができない▽学習や進路選択の模範となる先輩の数が少なくなる▽クラブ活動や部活動の種類が限定される――などに加え、配置できる教員の数が限られるため、生徒が履修できる科目が限られることを挙げた。

 その上で、▽全ての高等学校で維持されるべき機能はどのようなものか▽小規模校におけるメリットを最大化し、課題を緩和するための方策として、どのような取り組みが必要か▽小規模校においては、遠隔教育の活用や学校間連携の推進に取り組むことが考えられるが、こうした取り組みの推進のために、どのようなことが必要か――などを論点として挙げた。

 岡本尚也委員(Glocal Academy代表理事)は「小規模校に行くと大学進学が難しいといったイメージを、まず変えていかなければいけない」と強調。「進路の多様化に対応できるような学校の多機能化を進めるためにも、教員の質と担保が必要」と述べた。同時に将来、大量退職による高校教員の不足に備え、業務の精選に加え、事務作業員や地域コーディネーターといった人材拡充に対する支援を、国がより積極的に行うことを求めた。

 濱田久美子委員(高知県教育センター企画監、元高知県立山田高等学校長)も「全ての高校で実施されるべき機能は、まずは子供たちの進路保障」と指摘。小規模校での実施が難しい習熟度別学習について、遠隔授業の配信による補完を進めるべきとした。さらに、18歳成人を見据えた地域との連携や協働の取り組みが必要だと述べた。

 塩瀬隆之委員(京都大学総合博物館研究部情報発信系准教授)は「大事なことは古いスタイルの学校を取り戻すことではなくて、生徒にとって多様な同級生と交流できる機会と、多様な大人の背中に触れて自分のキャリアを考えられるような機会を維持すること」と主張。「統廃合も含め、生徒の居場所としての学校を機動的に作るためにも、今あるイメージを捨てなければいけない」と述べ、鉄筋コンクリートで47年の耐用年数を前提としている学校建物の在り方も考える必要があるとした。

 青木栄一委員(東北大学大学院教育学研究科教授)は、塩瀬委員の意見を補足する形で設置形態について言及。「高校は中学校よりも大きな規模の学校教育だというのに、固定的に捉えられていた」と指摘した上で、公立私立や都道府県、市町村といった2択ではなく、都道府県や市町村の共同設置、NPOや企業による公設民営の学校設置を中山間地域や離島などで進めるために、設置主体の緩和も考えるべきとした。

 長塚篤夫委員(順天中学校・高等学校長、日本私立中学高等学校連合会常任理事)は財政的な問題が一番のネックになると前置きした上で、「少子化の中で最大のメリットは、1学級当たりの人数を小さくできること」とし、小学校で行われている少人数学級について、高校も進めていくべきとした。

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