「眠育」で児童生徒の健康を育む 飛騨市の取り組みを報告

「眠育」で児童生徒の健康を育む 飛騨市の取り組みを報告
岐阜県飛騨市が小中学生を対象に取り組む眠育について報告したシンポジウム
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 子どもたちが睡眠への正しい知識と習慣を身に付ける「眠育」について、岐阜県飛騨市学校保健会はこのほど、都内で開催された国立青少年教育振興機構主催の「未来を拓く子供応援フォーラム」で報告した。同市では2006年度から小中学生を対象に、独自の「生活習慣見直しシート」を活用した「眠育」を実施。子どもたちの就寝時間が早まるなどの成果が表れており、発表した同市学校保健会の中田美保子氏は「生活が乱れがちだったコロナ禍においても、ほとんどの子どもたちが規則正しい生活を送れている」と述べた。

 同市学校保健会では、児童生徒の実態に応じた生活実態調査を各学校で行っていたが、06年度からは同市の全小中学校を対象とした「生活習慣見直しシート」に統一。その際の調査では、午後11時以降に就寝する中学生は65%ほど、午後10時以降に就寝する小学生は42%ほどいることが分かった。中田氏は「子どもたちの健やかな成長には、睡眠が欠かせない。そこで、本市では小学生は最低8時間、中学生は最低7時間の睡眠時間が取れるように、取り組んでいった」と説明した。

 同市の「生活習慣見直しシート」は、例えば「寝る時間は決まっているか?」や「布団に入ってすぐに寝られるか?」「平日のテレビ、インターネット、ゲームの時間は?」などの質問に答えて数値を入力すると、個人のレーダーチャートができるようになっている。子どもたちはこの結果から自分の生活習慣の状態を理解し、自ら改善すべき点に気付くことができる。そこから自分が取り組むことを具体的に考え、個々で継続して取り組んだことで、睡眠時間の改善につながった。

 また、特に中学生は「寝る時刻は決まっているか?」という質問に、「決まっていない」「日によって違う」という生徒が50%以上いる状態が続いた。そこで、安定した生活を送ることを意識するために、自分たちで1週間の生活を記録し、「睡眠タイプ」を判定するなどして取り組んだ結果、年々、寝る時刻が決まっている生徒の割合が増えてきている。

 中田氏は「コロナ禍で子どもたちの生活リズムの乱れが指摘されているが、本市では個別には問題のあるケースもあるものの、ほとんどの児童生徒は規則正しい生活が送れている」と成果を強調。「子どもたちが自らの生活を振り返り、自分の健康課題に気付けるように働き掛けている。また、保護者や地域に向けて眠育に関する講演会など、啓発活動を行っていることも成果につながっているのではないか。これからも継続して取り組んでいきたい」と話した。

 参加者からは「こうした取り組みをすることで、保健室登校や不登校も減っているのではないか」との質問があり、中田氏は「生活習慣見直しシートなどにより、各校の養護教諭が子どもたちの生活習慣を把握しているので、生活リズムの乱れなどの早期発見につなげることはできている。ただ、コロナ禍においては、保健室登校と不登校は若干増えていると感じている」と述べた。

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